ローズマリーの赤ちゃん

ローズマリーの赤ちゃん/ROSEMARY'S BABY
1968年 アメリカ映画
【監督】
ロマン・ポランスキー
【出演】
ミア・ファロージョン・カサヴェテス、ルース・ゴードン、シドニー・ブラックマー

私の好きな女優というと多くはヨーロッパのお方。でも、アメリカ人にも好きな方々が幾人か居られる。その中で一等好きな女優というとミア・ファローなのだ。最も多 くの出演作品を観ているのもミアだと気付いたのは比較的最近の事。その数という点ではウディ・アレン作品が好きだという理由も重ねていると思う。ミアの主演作品で一等好きなのは「フォロ・ミー」だろうか?それとも・・・と色々浮かぶ。でも、これまで通り、先ずは最初の出会いからという事で、このコーナーは綴っていこうと思 うので、「ローズマリーの赤ちゃん」を。

これまたTVが最初。この少し前にシシー・スペイセクの「キャリー」もTVで観てシシー のファンになる。どちらも中学生の頃だったと記憶している。私はいわゆる"オカルト"というものが苦手だ。でも、サスペンス色の濃いオカルト、心理サスペンス、サイコホラー的な作品は割と好きな様だ。視覚的な怖さよりも心理的な切迫感に恐怖を感じる事もあると思う。怖いながらもその様な心理描写や心象風景を想像するのが好きなのかも知れない。特にこの「ローズマリーの赤ちゃん」はロマン・ポランスキー監督ならではの、また、1968年のN.Y.ならではの作り物ではない、あり得る怖さは今観てもヒヤリとする。だんだん、この日本でさえ正気と狂気の区別などつかなくなっているのだから。アイラ・レヴィンの原作をポランスキーが脚色・監督。主演のローズマリーウッドハウス役にはミア・ファロー、ご主人のガイ・ウッドハウス役には ジョン・カサヴェテス。カッコイイ!カサヴェテスまでもが??!!という最後まで一瞬の油断もできない構成進行。恐るべし!ポランスキーという所。

この作品はポランスキーの名作に間違いは無いと私は思っているけれど、このローズマリー役のミアの存在無くしては有り得ないと思う。仲睦まじい若い新婚夫婦がマンハッタンの古いアパートにやって来る。始終ミアのファッションが可憐でその印象が最初から強かった。そんなミアが髪をショートにして登場する辺りから、次々と誰も信じられない!という状況に追いつめられていく。でも、お腹には愛しい赤ちゃんが。この辺りは母としての強さをも感じる所。隣人の異様さ、時計の音・・・この舞台と なったアパートはダコタ・ハウス!(ジョン・レノンは此処で最期の時を過ごした)後半ますます神経症的な状態となるミアの演技は凄い。というか彼女ならではのエキセントリックさが見事に開花される迫真のミア・ワールドだ。エキセントリック・ミアの魅力爆発。演技をしている風でもないという気さえする。そして、あの華奢な身 体と可憐さ、可愛らしさが有ってこその怖さの増すシーンが後半隙のないテンポで観る者をも追いつめていく。

ミア・ファローはこの様な役がハマるのだけれど、それだけではない知的な都会の女性をも゛普通゛に演じる。大きく分けて極端な役柄を自然体で演じている様に感じる。そんな 所がとても好きなのだ。他には居ない風変わりな可愛いお方だと思う。特にこの時期 の作品に共通する、どことなくぎこちない動きとか歩き方とか最高!に好き。子供の頃に小児麻痺の為学校に行けず、お家で読書ばかりしていたという。裕福な家庭に育 ちながらもその様な孤独な少女期を過ごした。ミアは壊れてしまいそうな水晶玉の様でいて実は強靱な様でもある。それは彼女の自由さ!という生き方にも繋がるように 思う。(また、この辺りは違う作品で綴りたいと思う。)

この映画を語るときに忘れたくない音楽担当は、かのクリストファー・コメダである。 ポランスキーはこの作品以前からコメダと組んでいる。この「ローズマリーの赤ちゃ ん」で一躍脚光を浴びるのだけれど同じ年に美人女優の妻シャロン・テートと結婚。しかし、チャールズ・マンソン一派に身籠もっていた赤ちゃん共々惨殺されてしまう。 呪われているとしか思えないのはあのダコタ・ハウス...。ポランスキー作品には好 きな女優さまが多く出演しているから嬉しい。なので、これからもポランスキーの名 は出てくると思う。今もなお逃亡犯である(幼女暴行事件で実刑)この特異な監督は パリ生まれのポーランド育ち。でも、最もN.Y.の怖さを描くことが出来る様にも思え る。オープニングとエンディングに流れるテーマ曲も大好きだ。バックで儚く聞こえるスキャット・ヴォイスはミア・ファローである!この妄想か現実かの曖昧さの様な独特の残像までをも含み、全てに於いてサイコホラーの名作だと思う。

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