『暗黒街のふたり』 ジョゼ・ジョヴァンニ監督 (1973年)

暗黒街のふたり暗黒街のふたり:DEUX HOMMES DANS LA VILLE
1973年 フランス映画 
ジョゼ・ジョヴァンニ監督 出演:アラン・ドロンジャン・ギャバン、ミムジー・ファーマー、ミシェル・ブーケ、イラリア・オッキーニ、ジェラール・ドパルデューベルナール・ジロドー 音楽:フィリップ・サルド
またアラン・ドロンの映画を観た。50年代の終わりから90年代初頭まで、休む暇も無い位の作品数なのだ。そして、贔屓目かもしれないけれど名作がズラリと並んでいる事に驚く。ただの美男スターでは無いのが幸いだ。この「暗黒街のふたり」は久し振りに観たのだけれど(好んで観ようとしない私がいる)、やっぱりかなり落ち込んでしまった...。

ジャン・ギャバンとの共演としては「地下室のメロディー」「シシリアン」に続く3作目(ギャバンがもう少し生きておられたらまだ共演作があったのではと思う)。ジョゼ・ジョヴァンニ監督とアラン・ドロン、このコンビは好きだとやっぱり思った。ただ、やるせない気持ちで見終えた後、重い気分がなかなか拭えない。もう一人の名優ミシェル・ブーケは素晴しい程に憎たらしいゴワトロー警部役。この警部は元犯罪者のジノ(アラン・ドロン)を執拗に尾行し監視を続ける。愛する妻を事故で失い、その後、銀行員の恋人ルシー(ミムジー・ファーマー)と、印刷工員として更正して生きているジノだったのに。

あんなにも執拗な懐疑心を抱くゴワトローの事を、ジノの保護司であるジェルマン(ギャバン)は「おまえが怖いのだよ。」と語る。その恐怖心は偏見と変貌するのだろうか?その逆なのだろうか?最後まで優しくジノを見守るジェルマンの存在と、このゴワトロー、そして元犯罪者としてのレッテルを背負いながらも真っ当に生きようとしているジノ、そしてルシー、それぞれの思いが単純に語れるものではない様に思う。自ら投獄体験のあるジョヴァンニは多くのフィルム・ノワール作品を手掛けて来たお方だった(2004年に惜しくも他界された)、それ故に悲痛な静かで強い叫びの様なものも感じてしまう。大きな偏見の眼差しが犯罪者を生む...もちろん、犯罪を正当化するようなことではないけれど。

車の修理工場かな?そこの車をジーノがむしゃくしゃして叩き潰すシーン。ゴワトローを我慢成らず殺してしまい、結局は死刑判決が下りギロチンへ。その時の白いシャツの襟を鋏で切られるシーン。青ざめたジノの最後の言葉はジェルマンに「怖い...」だった。そして、最後は真っ黒な画面が暫く続き終える。あの黒い画面が少し私を救ってくれた気がした。

久し振りに観て気付いた事は、若き日のジェラール・ドパルデューベルナール・ジロドーが出ていた事。ミムジー・ファーマーがとても可愛い事。こういう再発見は楽しいけれど...重い。でも、この映画を観て良かったと思う。また、いつか観るだろう...。