隠された記憶

隠された記憶:CACHE
(2005年・フランス/オーストリア/ドイツ/イタリア合作映画)
 
監督:ミヒャエル・ハネケ 出演:ダニエル・オートゥイユジュリエット・ビノシュ、モーリス・ベニシュー、アニー・ジラルドダニエル・デュヴァル、ナタリー・リシャール、ベルナール・ル・コク

フランス映画祭2006」、もちろん全作品を観る事は出来なかったけれどこの『隠された記憶』はとても良かった。決して爽快な後味ではないけれど好きな作風なのだ。去年のカンヌ国際映画祭でハネケ監督は監督賞を受賞された。TVで観ていたので少し内容が映し出されれ、監督も好きだけれどダニエル・オートゥイユジュリエット・ビノシュの共演というのも興味のあるものだった。私は映画館に行く時、大抵はあまり予備知識無しで行く。なので、アニー・ジラルドがジョルジュ(オートゥイユ)の母親役で出演されていて嬉しかった。アラン・ドロンが尊敬している女優として、シモーヌ・シニョレと共にアニー・ジラルドを挙げておられた事を思い出す。

オープニングからジョルジュとアン(ビノシュ)夫妻の住む家の正面が映し出される。途中「あれ?画像が...」と思っているとそれは何者かが送ってきたビデオだったのだ。得体の知れない恐怖と緊張が次第に夫婦感に生まれる。こういうストーカー行為というのは現実に行われているし、観る側の私も現実に起こりうるこのような冒頭から少しドキっとしていた様に思う。まだ公開されたばかりなのであまり内容は書かない方が良いのかも?

今も何かを考えている私、この映画を観て。長い余韻が残る映画だ。ハネケというとイザベル・ユペール主演の「ピアニスト」が有名だと思う。あの映画も大好きだけれど重いなぁ...今回も。色んな問題がこの約2時間の中に込められていると思う。色々考える。40年も前の事、たかが子供の悪ふざけ...。しかし...。子供って可愛いけれど、時にとても残酷。純粋なゆえの残酷さという事...。ただ、自分の立場を登場人物のいろんな人に当てはめて考えてみるとますます考え込んでしまう。人種問題もここには含まれているし。隠された記憶、その時間、その時が運命を変えてしまう事がある。その時が不幸への始まり、孤独への始まりだとしたら...。40年も前の事、と笑って忘れられないこともあるのだと思う。ジョルジュは忘れてしまいたい昔の記憶で、罪悪感も感じていた様には思えなかったけれど、2度目に送られてきたビデオ、次の不気味な絵...と差出人が浮び出す。でも、妻にも話せない。終盤のショッキングなシーン。ハッキリとした終わり方ではない、観る側の私は今も考えている。ハネケ監督の伝えたいことは?こういう状態なのだと思う。帰り際、「結局、どうやったんやろう?」と前を歩く女性お二人がお話されていた。私も同じ様に考えていた。そして、今も考えている。