『オール・アバウト・マイ・マザー』 ペドロ・アルモドバル監督 (1998年)

オール・アバウト・マイ・マザー オール・アバウト・マイ・マザー
監督:ペドロ・アルモドバル 出演:セシリア・ロス、マリサ・パレデス、ペネロペ・クルス、アントニア・サン・フアン、ロサ・マリア・サルダ (1998年・スペイン映画)

ペドロ・アルモドバル監督作品と知ると観ていると気づく。いつも女性たちが主役で愛の様々な形、様々な女性の生き方を見せてくださるから好き。私は女性なのでどうしても男性のことはよく分からない。なので神秘的なのでもあるけれど、女性映画は身近に思えるのだろうか。この『オール・アバウト・マイ・マザー』はアルモドバル監督作品の中で最も泣いた映画。哀しみや優しさに対する涙に思う。アルモドバル監督は同性愛の方だと思うけれど、いつも女性たちを色んな角度から描く。色彩も綺麗でユーモアもある。そして、スペイン映画からハリウッド進出する今、ここではペネロペ・クルスがシスター・ロサ役で出ていて実に可憐。そして、劇中でも大女優役(女性しか愛せない)としてマリサ・パレデスの凛とした美しさにうっとり。個性的な女優さまのアントニア・サン・フアンは女装したゲイボーイを演じている。そして、息子を事故で亡くす母役のセシリア・ロス。最高!!何て素敵な人なのだろう。



最初にこの監督を知ったのは『神経衰弱ぎりぎりの女たち』。何かの雑誌で紹介されていてタイトルが面白そうだったので。そして、『ハイヒール』『キカ』でスッカリお気に入りの監督さまになっていた。カルメン・マウラもヴィクトリア・アブリルも国際女優として各国の作品で拝見するようになった。新作の『ボルベール』は昨年のカンヌで出演女優さま全員が最優秀女優賞に輝いた。古巣のようなアルモドバル監督作品にまたペネロペ・クルスもカルメン・マウラも帰ってきた。監督はとてもお優しいお人柄に思えた。そして、そんな素顔から各作品の核のような愛を強く感じる。アルモドバル監督にとって母という存在はかけがえの無いものなのだろう。様々な女性を描きながらも常に母なる存在がある。なので、子供のいない私でも何か母性なるものを刺激されるようにも思う。



監督のインタビューにより、主要な女性たちには実は引用された先輩女優さまの存在があったという。大女優ウマ・ロッホにはベティ・デイヴィス。息子を失った母マヌエラにはロミー・シュナイダー黒い瞳の修道女シスター・ロサにはエマニュエル・ベアール。そして、女になりたかった男アングラードはゲーリー・クーパーだと!それを知り、また再見してみるのだった。そして、古き名画『イヴの総て』やヴィヴィアン・リーの『欲望という名の電車』も劇中で引用されている。こうして映画を愛して止まぬ映画人たちは繋がってゆく。スペインで映画制作は安易なことではない。名匠たちが数多くいるのに作品は中断されたり、日本までやって来ない...。幸いにもアルモドバル監督作品は沢山公開され観ることが出来て嬉しく思う。



マヌエラは、息子に父親の存在を知らせずに育ててきた。打ち明けようとした矢先の事故。運命のいたずら。この悲劇からマヌエラは封印してきた過去に向き合う決意をする。マドリッドからバルセロナへと...。最後までダレる瞬間は私にはなく、マヌエラの静かに深く心を刺激する向かう道のりに力強さを感じ堪え切れず涙に溢れる。とっても好きな映画!



追記
ペドロ・アルモドバル監督作品というと、アントニオ・バンデラスも忘れてはならないのだった。今や大スターさまだなぁ〜♪