エディット・ピアフ 愛の讃歌

エディット・ピアフ~愛の讃歌~ (2枚組)
エディット・ピアフ 愛の讃歌/La Môme
2007年・フランス/チェコ/イギリス合作映画
監督・脚本:オリヴィエ・ダアン 製作:アラン・ゴールドマン 撮影:永田鉄男 美術:オリヴィエ・ラウー 衣装デザイン:マリット・アレン 音楽:クリストファー・ガニング 出演:マリオン・コティヤール、シルヴィー・テステュー、パスカル・グレゴリーエマニュエル・セニエ、ジャン=ポール・ルーヴ、ジェラール・ドパルデュー、クロチルド・クロ、ジャン=ピエール・マルタンス、カトリーヌ・アレグレ、マルク・バルベ、カロリーヌ・シロル、マノン・シュヴァリエ、ポリーヌ・ビュルレ

数日前に朝一番の上映を大急ぎで観て来た(もうすぐ終わりそうだったので!)。エディット・ピアフの映画だということ、扮するのがマリオン・コティヤールで、共演者にシルヴィー・テステューのお名前があったことのみの予備知識で観た。私はフランスの音楽が好きだし、私の世代ではない古いシャンソンたちも好き。ピアフというと、どうしても亡き母を想う、今も。いつもはガラン〜とした劇場なのに年輩のお方が多かった。この映画はひとりでそぉっと観ていたいと思い立ったのだった。ピアフのドキュメンタリー映像や御本、レコードやCD、嘗て観たクロード・ルルーシュの映画、美輪明宏様の舞台やコンサートやお話...私も歳を重ねる中でピアフという伝説の偉大なる歌手について・曲たちを私なりに好きになっている(過程なので、リアルタイムでない私如きが偉そうに語れるお方ではない!)。

映画は2時間強という時間。到底、この時間でピアフの47年間を描くことなど不可能なのだ。観てどう思うかは其々の感想があるだろう。日本でのタイトルは『LA VIE EN ROSE エディット・ピアフ 愛の讃歌』。この”愛の讃歌”と付いた辺りはマルセル・セルダンの登場シーン辺りから、ピアフの名曲が連鎖する。フランスのタイトルは『La Môme』。小さなピアフのあだ名でもある。映画は5歳のピアフ、10歳のピアフ、20歳のピアフ〜47歳の最期と子役2人とマリオン・コティヤールが演じている。マリオン・コティヤールは169センチだそうなので20センチ以上小さなピアフを演じていたのだ。とても素晴らしい!と思った。お話は私の知っている(読んだり観たりして得たものに過ぎないけれど)ピアフの人生だった。展開が、時間が行ったり来たりする、この交錯する描き方は好き(分かりにくいと思われるお方もおられるかもしれないけれど)。ピアフが晩年海辺で編み物をしていると若い女性記者が質問にやって来る。そのシーンで答えた言葉たち...ひしひしと込み上げていた想いが溢れ出し涙した。

歌えなくなったら? − 生きていないわ
死を恐れますか? − 孤独よりマシね
女性へのアドバイスをいただけますか? − 愛しなさい
若い娘には? − 愛しなさい
子供には − 愛しなさい
正直に生きられますか? − そう生きてきたわ

ありきたりの言葉、活字、単語...でも安易なことではない。ピアフは孤独を恐れていた、貧しい子供時代から愛に飢えていた。孤独というものを身に沁みて生きてきたお方のように想う。人は誰でも孤独だと想うけれど、そこで裕福な人や幸せな人を見ると僻んだり妬んだりするのが世の中の多く。ピアフは与えて与えて!という人生。誰にでも出来ることではない。もっと遺産を残せたお方なのに借金を残したお方。ピアフは多くの名曲たち、歌を残した。それらは今後も受け継がれてゆくものだろう。生涯の親友となるマレーネ・ディートリッヒ(カロリーヌ・シロル)と初めて会話を交わすシーンのピアフの嬉しそうなときめきの表情。愛するセルダンの死を知るシーン....無理な体調の中でのコンサート。劇中、ジャン・コクトーイヴ・モンタンシャルル・アズナヴール...といったピアフを愛した人達のお名前が出る時、私は嬉しかった。ピアフの子供時代、売春宿のマダム・ルイーズを演じていたのはカトリーヌ・アレグレ。これまたフランス映画史に欠かせないお方でありモンタンの奥様でもあったシモーヌ・シニョレの娘さま。売れない時代からの親友モモーヌ役はシルヴィー・テステュー。子供時代のピアフを一番可愛がってくれたティティーヌにはエマニュエル・セニエ。ピアフの母はクロチルド・クロ(母親役を演じるお歳になったのだなぁ...と『ピストルと少年』を懐かしく想った)、また、パスカル・グレゴリーも好きな男優さまだし、ジェラール・ドパルデューもルイ・ルプレ役で短いシーンながら出演・・・と豪華な俳優揃い!ピアフの歌を真似るなんて誰にも出来ないのに、歌っているかのように錯覚するマリオン・コティヤールって凄い!『銀幕のメモワール』でジャンヌ・モローの若き日の役として出演されていた。その他数本観ていて『エコール』では優しいバレエの先生役だったのが去年観たもの。そして、今年は主役、それもピアフの役として拝見できた。ますます、お気に入りの女優さまとなってゆく。