『緑色の髪の少年』 ジョセフ・ロージー監督 (1949年)

『緑色の髪の少年』 ジョセフ・ロージー監督 (1949年)

ジョセフ・ロージー監督のデビュー作である『緑色の髪の少年』(1949年)。60年も前の古い映画ながら色褪せない名作だと思う。私はジョセフ・ロージー監督は好きな監督を挙げると2番目か3番目には出てくる大好きなお方。この『緑色の髪の少年』を初めて観たのはずっと後で、英国人だとばかり思っていた。けれど、このデビュー作はアメリカ映画で、後に監督は”赤狩り”のためにイギリスに亡命したのだと知る。そんなことも想いながら観返すとさらに深い作品に感じるようになった。

ロンドンで暮らす裕福な少年ピーター君の丸坊主頭の姿から映画は始まる。児童心理学者のエバンズ博士との対話による回想...。クリスマスには大きな彩られたツリーがお部屋にあり、プレゼントに犬とおもちゃを貰ったと。そんな幸せな時間は短く、幼くして両親を戦争で亡くす。けれど、親戚の人々はまだ幼い少年にその事実を知らせることはできない。両親は外国に旅行に行っていると思うようにしていたようだ。子供心に両親が死んでしまったのだと感じていたけれど、まさか戦争で!とは思っていなかった。親戚中をたらい回しにされた挙句、優しいおじいさん(パット・オブライエン)と暮らすようになり、新しい学校へも通う。ある日、授業でドイツの戦争孤児たちの写真を見ることに。すると、級友が”君も戦災孤児だよ”と告げ喧嘩になる。両親は子供たちを救うために戦死したのだけれど、ピーター君には”他の子供を助けて、僕を捨てた”と思ったりする。町中で大人たちは戦争のお話ばかり。おじいさんは夜はお仕事で留守がちでピーター君は暗い夜を一人で過ごす日々。ベッドの横にはいつもバットを置いて...こんな状況で繊細で真心のある少年の心はどんなに恐怖だっただろう。

おじいさんの”明るいときには見えない、暗闇には見えるものがある”という言葉を信じて眠る。そんなピーター君は次第に夜の暗さが平気になってゆくけれど、多感な少年時代の想像力は豊かに働くのだろう。お風呂で髪を洗った後、髪が緑色になっていた。おじいさんと病院へ行くけれど、身体に異常はないという。例のないことだと。けれど、級友たちにはからかわれ、牛乳やお水のせいではないかと牛乳屋さんのおじさんも困ってしまう。本人が一番元の髪に戻りたいのに大人たちは髪を剃れば元に戻ると言って床屋さんで坊主頭にされてしまう。ピーター少年の幻想の世界。森の中であの授業で見た戦争孤児の少年少女たちに出会う。彼らはピーター君の緑の髪は”春の色、希望の色”だと言う。”戦争は子供を不幸にする”とも。そして、町の人々に戦争で地球が滅びること、愚かなことを告げて回る場面。軽やかな歌と綺麗な色彩の映像はとてもファンタジック。幻想的でメルヘン的とさえ感じるユニークな作風。ジョセフ・ロージー監督の秀逸な反戦映画!バーバラ・ヘイル扮する美人で優しい先生の存在も欠かせない☆

緑色の髪の少年/THE BOY WITH GREEN HAIR
   1949年・アメリカ映画
監督:ジョセフ・ロージー 原作:ベッツィ・ビートン 脚本:ベン・バーズマン、アルフレッド・ルイス・レヴィット 撮影:ジョージ・バーンズ 音楽:リー・ハーライン 出演:ディーン・ストックウェル、パット・オブライエン、バーバラ・ヘイル、ロバート・ライアン、ドウェイン・ヒックマン

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