トーク・トゥー・ハー

トーク・トゥー・ハー:HABLE CON ELLA
2002年 スペイン映画 ペドロ・アルモドバル監督

出演:ハヴィエル・カマラ、レオノール・ワトリング、ダリオ・グランディネッティ、ジェラルディン・チャップリンカエターノ・ヴェローゾ

いつもながら奇抜で独自の愛と性を描く監督さんだと考え込んでしまった。「オール・アバウト・マイ・マザー」もとても良かったけれど、この「トーク・トゥー・ハー」も良かった。でも、かなりの問題作だと思う。何か全てに納得出来ないけれど、この様な愛のかたちがあってもいいと思うし、実際あるだろう。

バレリーナアリシア役のレオノール・ワトリングはとても可愛いお方だ。一方的に恋していた主人公のベニグノは看護士で、事故で4年間昏睡状態となる彼女を優しくずっと介抱し、彼女の好きな映画を観に行ってはその感想を報告する。綺麗に身体を拭きお化粧もしてあげる...意識は無い彼女なのに。あるサイレント映画がきっかけで、まさか!?の行為を彼は犯す。ここが問題...。良いとか悪いとか、そういう事は考えたくない。この様な「愛」もあると。彼は心から彼女を愛していたのだろうから。でも・・・?

同じ境遇に遭う友人マルコの「愛」もある。こちらは理解しやすいのかもしれない。この映画は犯罪を問うたものではない。最後にベニグノは自らの命を絶つ。蘇生したアリシアの事を知らされないままに。彼の事をストーカー的変態と評するお方もいるだろう。それ程、強烈なお話展開なので。でも、ふと、エドガー・アラン・ポー川端康成の描いた小説が脳裏を掠めたりする私は、この映画は好きだと言える。

スペイン映画と言えば、カウロス・サウラ監督の「カラスの飼育」はとても、とても大好きな映画。その中でアナ・トレントちゃんのお母さん役を演じていたジェラルディン・チャップリンが出演されていて嬉しかった。個性的な好きな女優様。ドミニク・サンダ様と共演された「二人の女」、もっと古くは「ドクトル・ジバゴ」等好きな作品に多数出ていらっしゃる。かのチャップリンの娘さんでもある。

音楽も(カエターノ・ヴェローゾなど)素晴らしく効果的だった。覚えにくいお名前だけれど、マルコ役のダリオ・グランディネッティというお方を初めて知った。舞台を観ながら泣くシーンがとても印象に残っている。ベニグノの棺にはお母さんとアリシアの写真を一緒に入れてあげたと語る。ベニグノにとって、愛した女性はこの二人だったのだから。純粋過ぎる事の罪でもあるのだろう...不思議な優しい映画だ。