哀しみの街かど

哀しみの街かど:THE PANIC IN NEEDLE PARK
1971年 アメリカ映画 ジェリー・シャッツバーグ監督

出演:アル・パチーノキティ・ウィン、アラン・ヴィント、リチャード・ブライト

アル・パチーノの「シモーヌ」と「哀しみの街かど」と新旧作品を観ていた。見終えた後の残像がほろ苦く残る「哀しみの街かど」の方がやっぱり好き。これはもうどうしようもない、時代の空気感だから...。原題のNEEDLE PARKというのが痛々しいくらいだった。ドラッグ(麻薬)の蔓延する街で暮らす若いカップル。アル・パチーノ扮するボビーとキティ・ウィン扮するヘレン。

麻薬の怖さ、陥り易い人間の脆さ、日々の生活、愛する者同士...1971年のアメリカ、当時のファッションや荒廃する都市と若者たちを描いていて、アメリカン・ニュー・シネマと言われていた時代の作品なのだろう。ジェリー・シャッツバーグ監督はファッション誌のカメラマンから映画監督へ転身しての第2作目となるのがこの作品。次作はまたアル・パチーノと組んでのかの「スケアクロウ」(ジーン・ハックマン共演)と続く。

アル・パチーノはこの作品が主演としては最初のものだそうだ。30歳を過ぎてから現在65歳。多くの名作があるけれど知っているだけを頭に浮かべただけでも「やっぱり、凄いなぁ〜。」って思ってしまう。「ゴッドファーザー」でブレイクだろうけれど、この「哀しみの街かど」を観たコッポラ監督が抜擢したのも納得!というシーンがいくつもある。チャーミングな目元とどこか憂いを帯びた幸福ではないあの感じは胸に突き刺さる(そういう辺りは演技とかではなく、アル・パチーノという人の持つ拭い去れないものの様にも感じる)そして、あの迫力は凄味があり怖い。可憐なキティ・ウィンが殴られたりする時、観ている私まで痛く感じるし怖いのだ。あのチャーミングな瞳が凄味を増し違う眼光を浴びせる...なので、マイケル・コルレオーネへの繋がりが自然に思えたりした。

キティ・ウィンは時折、フランス・ギャルを少し彷彿させる可憐な女性で素敵だ。後に「エクソシスト」に出演したっきりで何処へ行ってしまったのだろう...。「哀しみの街かど」はアル・パチーノと同じくらいにキティ・ウィンの存在無くしてはここまで語られる作品では無かった様に思う。それにしても、どんよりと切ない気持ちになってしまう。