『アナザー・カントリー』 マレク・カニエフスカ監督 (1983年)

アナザー・カントリー [DVD]
アナザー・カントリー:ANOTHER COUNTRY
1983年 イギリス映画 マレク・カニエフスカ監督

出演:ルパート・エヴェレットコリン・ファースケイリー・エルウィズ、アンナ・マッセイ

今年になり、20年来の友人と暫しの時間を愉しんだ。博識な方なので色々なお話が出てくる。お互いのお仕事のお話などをしている中で映画のお話に。そんな折、「やおい文化詳しいもんなぁ。」と言われた私。唐突にこのやや懐かしい言葉の響きにドキっとした。詳しい訳ではないけれど「好きですね、どうしてか...。」と答えた。ふと、私は80年代からもう20年以上経った今、嘗て「少年愛」を描いた作品を愛好する女性ファンに称された言葉が鮮やかに甦る気がした。「やおい少女」。そんな私を否定しない。しかし、「腐女子」「不健康」と言われたことも思い出す。よく考える事なのだけれど、「少年愛」の歴史はこの日本にはとても古くからあった。そして、私は同時に「少女愛」者でもあると思う。こういう活字だけを読まれてお怒りのお方もおられると思う。言葉は死語化し新しい言葉に変わって行く・・・そんな中、ロリコンとかオタクとか。総じて語られるものではなく、ましてや非難される筋合いもないのだけれど、何故か「こっそり楽しんでいるかの様な」隠微なニュアンスが病的に映るのだろうか?(私はこっそりではないので非難されたのだろう、でもこっそりだったとも言える。)それに、言葉に慎重にならなくてはならない最近の惨殺な事件の数々。しかしながら、私はそんな少女時代から継続して今はすっかりよいお歳になってる女性である事は間違いない。退廃的な大人の女性、自立した女性も大好きな私の心のバランスは不安定ではある。

こんな事を考えると80年代に「アナザー・カントリー」から「モーリス」...と英国映画界は美しき青年たちの愛と葛藤を描いた作品を生み出していた。そんな時代をリアルタイムに生き、それらの作品たちを鑑賞しながら、ボウイやバウハウスコクトー・ツインズ等の音楽を愛聴していた私。20年も前の事には思えない。そして、これらの映画の出演者達は今も大活躍!今のハリウッド映画に英国俳優の存在は無くてはならないものの様に。

「アナザー・カントリー」のルパート・エヴェレットの美しさ、あの細い首筋とスラリとしたルックスは甘美に思えた。でも、同性愛に悩み葛藤するガイ(エヴェレット)の良き理解者である友人ジャド(コリン・ファース)の存在感。ガイが恋する別寮の美青年ハーコート(ケイリー・エルウィズ、キャリー・エルウイズ)。露骨な性描写がある訳ではなく、彼らの心の揺れ動き、時代や全寮制のパブリックスクール、エリートたちの宿命、思想など・・・とても考えさせられる映画でもあるのだけれど。どこかに偏見の眼差しを持って観るとまた違った感想があるのだとも思う。選んで観ているつもりもないのだけれど、同性愛というテーマの作品は多分に好きな私。好きなのだから仕方がない。幸いな事に同性愛の友人が男性も女性もいる。そして、彼等自身、何故かは分からない様だ。別に何故か?を探る必要もないように思う。そして、罪悪感や劣等感も必要ないと。異性愛者が正常?そんな事は断言出来ない。そして、偏見や好奇の眼差しがまだまだ多い現実をも否定出来ない...。