『クリクリのいた夏』 ジャン・ベッケル監督 (1999年)

クリクリのいた夏/LES ENFANS DU MARAIS
   1999年・フランス映画
監督:ジャン・ベッケル 原作:ジョルジュ・モンフレ 撮影:ジャン=マリー・ドルージュ 音楽:ピエール・バシュレ 出演:ジャック・ガンブラン、ジャック・ヴィユレ、アンドレ・デュソリエ、マルレーヌ・バフィエ、ミシェル・セロー、イザベル・カレ、エリック・カントナシュザンヌ・フロン、ジャック・デュフィ

好きな映画!この映画は直球の少女映画ではないけれど、此処では5歳の少女クリクリがあまりにも愛らしいので♪この映画にしか出演していないようだ。監督は敢えて演技経験の無い少女を探し、このマルレーヌ・バフィエが選ばれ自然な感じ。舞台は1930年のフランスのマレ地区(マレとは沼地のこと)、そこで家族のように自由に暮らす人々。原作は50年代のもので、監督は2000年になる前に描きたかったのだそうだ。老婦人となったクリクリに扮するのはシュザンヌ・フロン!監督もこのシュザンヌ・フロンもぺぺ役のミシェル・セローも30年代~50年代を体験してきたお方たち。懐かしい蓄音機・ルイ・アームストロングの曲・アコーディオンの響きと「五月の歌」・沼地で取れるウナギや蛙やエスカルゴ...年老いたクリクリの回想する声の深み...いっぱいの幸福なときを感じることができる。

マルレーヌ・バフィエ自身も撮影当時5歳で、この童女の笑顔や表情や動き!”ピエロ(少年)に恋してるの”と可愛い声で語る。でも、”恋ってなぁに?”とも訊くあたりでキュンとなってしまう!幼児期特有の歩き方や言葉の発し方や声♪木にぶら下ったタイヤに乗ってくるくる回って遊んでいる時の表情...それらは演技云々ではなくこの刻の童女の持つ自然体のものに想う。”こんな風に歩こう”とか”こんな風に笑おう”という演技ではないもの。なので、監督は演技経験のない少女を選んだのだろう。物質文明への挑発でもないけれど、幸せや自由はもう少し昔のことを想い出してみるとどうだろう...というようなノスタルジックな心の記憶を呼び覚ますような穏やかな作品。アメデ役のアンドレ・デュソリエも好きな男優さまで、アメデは結婚もせず、自由と音楽と本があれば幸せだ言うので、私はこの中ではアメデに親近感を覚えたりもする。また一度観たら忘れない個性派俳優のジャック・ヴィユレは、惜しくも同監督作品の『ピエロの赤い鼻』が遺作となってしまった(この作品でもアンドレ・デュソリエシュザンヌ・フロンは共演者)。少女クリクリは写真で観るよりも動く映像の中の方がずっと可愛い☆

※この映画の中で洋館で働くメイドの美しいマリー役のイザベル・カレが最初の目的で観たものだった。1997年の『視線のエロス』で初めての主役としての作品を観た。映画デビューは1989年の『ロミュアルドとジュリエット』(これはダニエル・オートゥイユが好きで観たもの)。当時公開のチラシやビデオにも『視線のエロス』のイザベル・カレを15歳の少女が22歳を演じていると記されていて、ロリータ映画と言っていた友人がいたので不思議に想ったものだ。カレは当時25.6歳で22歳を演じているのでまあ、年相応の役。活字化されたものは知らない内に広まり著名人の言葉は影響力が大きいもの。ちょっとしたデータミスかその経緯は知らない。イザベル・カレは助演も主演も演じられる素晴らしい女優さまのおひとり。でも、日本公開されていないここ数年の作品に観たいものが幾つかあるので気長に♪

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