『ミツバチのささやき』 ヴィクトル・エリセ監督 (1973年)

cinema-chouchou2008-06-10


”あなたの好きな少女映画をひとつだけ挙げるとしたら?”と尋ねられたなら、間違いなくアナ・トレントの出演作品を選ぶだろう。『カラスの飼育』も同じくらいに好きだけれど、先に観た、この稀なる奇跡の少女”アナ・トレント”の存在に釘付けとなったのはこの『ミツバチのささやき』。そして、ヴィクトル・エリセ監督のお名前も知った。この『ミツバチのささやき』は1973年のスペイン映画ながら、公開されたのは1985年。そして、1982年作品の『エル・スール 南へ』の公開も1985年。この映画のことを想うととても多くの文字数になるので、少しずつ纏めて追記しながら綴ってゆきます。今、読んでいるもの、最近見直した映画たちについてもまた。不思議なくらいに関連した事柄なので。とてもシリアスなこと。この寡作なヴィクトル・エリセ監督の長編デビュー作である『ミツバチのささやき』が制作された時代はフランコ政権時代。何故だか、私の好きな映画はよくこの時代だったり、時代背景がそうであったりするのも不思議。

アナ・トレントに劣らぬ程可愛い姉イザベル役のイザベル・テリェリアの存在も欠かせない。彼女はこの作品でしか知らない。役柄名もイザベルとアナ。姉イザベルは9歳、妹アナは6歳。父親フェルナンド(フェルナンド・フェルナン・ゴメスは素晴らしい俳優であり監督であったお方ながら、惜しくも昨年お亡くなりになられた)、母親テレサテレサ・キンペラ)、医師ミゲル(ミゲル・ピカソ)と名前を劇中でも変えずに使っている。撮影、音楽、衣装デザイン...全てが静かで優しく深い。移動巡回映写(1940年代)が小さな村にやって来る。『フランケンシュタイン』を村人たちと共にこの姉妹も魅入っている。アナの疑問、姉妹の死の遊び、父の養蜂のお仕事、母の書いている手紙、脱走兵...現実と空想の狭間のまどろみに酔う。

フランケンシュタインは怪物ではなく精霊で、死んだのではなく、村のはずれの井戸のある一軒家に生きていて、「ソイ・アナ(私はアナよ)」と名乗りかければ出てきて友達になってくれる

イザベルのこの言葉を信じたアナ。9歳のイザベルと6歳のアナ。微妙な幼少期(少女期)の差。イザベルは遊びの感覚でいる。もう少し幼いアナはフランケンシュタインが生きているということ、精霊も信じている。故に、二人のそれらに対する恐怖感は違う。実は怖いと感じるのはイザベルの方なのだから。この映画はこの姉妹が無くてはならない。イザベルの存在がアナのあの眼差しで語りかける危うさを際立たせているようにも想う。生と死、真実と嘘...この映画は語りかけるようだ。原題は『ミツバチの精霊』☆

関連:『ミツバチのささやき』 アナ(アナ・トレント)とイザベル(イザベル・テリェリア)の可愛い姉妹♪ : クララの森・少女愛惜

ミツバチのささやき/EL ESPIRITU DE LA COLMENA
     1973年・スペイン映画
監督・原案:ヴィクトル・エリセ 脚本:ビクトル・エリセアンヘル・フェルナンデス=サントス 製作:エリアス・クェレヘタ  撮影:ルイス・クアドラド  音楽:ルイス・デ・パブロ 出演:出演:アナ・トレント、イザベル・テリェリア、フェルナンド・フェルナン・ゴメス、テレサ・キンペラ、ミゲル・ピカソ
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