『悪い種子(たね)』と『死の天使レイチェル』
悪い種子(たね)/THE BAD SEED 1956年・アメリカ映画 監督:マーヴィン・ルロイ 原作:ウィリアム・マーチ 脚本:ジョン・リー・メイヒン 出演:パティ・マコーマック、ナンシー・ケリー、ヘンリー・ジョーンズ、アイリーン・ヘッカート、イヴリン・ヴァーデン、ウィリアム・ホッパー |
原作は共に、ウィリアム・マーチによるものが基になっているけれど未読。『悪い種子(たね)』の方のローダは8歳。そして、レイチェルの方は9歳で此方では父が亡くなっているという設定。大まかなお話の流れはどちらも同じだけれど、少女の印象が大きく違うので良い。個人的にはレイチェル役のキャリー・ウェルズの方が好きなのだけれど、この作品でしか知らない。ローダ役のパティ・マコーマックは演技力のある子役時代から今も女優業を続けておられる。脇役の大人たちも其々個性的。これはサイコスリラーとしてとても秀作だと想う。一見天使のような少女の邪悪な魂...それを遺伝という描き方をしている点も興味深いように想う。
このパティ・マコーマックは見るからに気が強そうでしっかりした少女。なので、リメイクである『死の天使レンチェル』(1985年)での少女レイチェル(名前はローダからレイチェルに変っている)を演じるキャリー・ウェルズの方がさらに怖さは倍増な私。見た目があまりにも愛らしい少女で、彼女は涙も流す。そんな表面とは裏腹に心の邪悪さがさらに恐怖に感じるのだと想う。こちらの母親役はブレア・ブラウン。どちらも母親が最も悲傷で罪は自分にあると責めるのだ、血のせいだと。でも、掛け替えのない我が子をこれ以上放っておくことも出来ず、人をこれ以上殺めてはならないのだと決断をする。二人共に死へと...しかし...。結末はこの二作品では異なる。
※『悪い種子(たね)』の少女ローダと『死の天使レイチェル』の少女レイチェル♪として綴ったものに少し追記致します。
同じクラスの少年が海で溺死(母親は最初は全く娘を不審にも思わず事故死だと哀しんでいる)したことで、まだ幼いローダはどれ程ショックを受けて帰ってくるだろう...と二重の不安である。けれども、”ただの事故よ。”という感じでローラースケート靴に履き替えて笑顔で外に出かけるのだった。学校側は不審に想っている。また、亡くなった少年の母親が酔払って真実を!とローダとお話がしたいと2度やって来る。雇い人のリロイという男性はなかなかキーマンで、彼はローダの性悪な心を見抜き、やや妄想気味にからかったりする。それが大きく当ってしまい彼もうろたえる...しかし、彼もまた殺されてしまう。全て事故死のように周りは見える。最も嘆き苦しむのは母親で、どちらも母親役は素晴らしいと想う。リロイの休む小屋が炎を上げ、”助けてくれ!”と叫ぶ声が聞こえる中、ローダは動じることもなく「月の光」を弾いている。レイチェルのピアノ曲は「エリーゼのために」だったと想う。犯罪心理学、ミステリー小説、フロイトの名も出てきたりと変ったサイコ・スリラー作品で、優れたサスペンス映画だと想う。私はホラー的には感じなかったもので。でも、遺伝だとすると、その呪われた宿命を受けた少女が可哀想にも想ったり...。でも、母親の苦悩は想像できない程のものだろう!と余韻を残した。
死の天使レイチェル/THE BAD SEED
1985年・アメリカ映画
監督:ポール・ウェンドコス 原作:ウィリアム・マーチ 脚本:ジョージ・エクスタイン 出演:キャリー・ウェルズ、ブレア・ブラウン、デヴィッド・キャラダイン、リン・レッドグレイヴ、リチャード・カイリー