『妖精たちの森』 マイケル・ウィナー監督 原作:ヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』  (1971年)

cinema-chouchou2008-08-31



これも大好きな映画であり、原作も大好きなヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』をマイケル・ヘイスティングスが脚本化した作品。1971年のマイケル・ウィナー監督による英国映画。原作とは赴きが異なり、大人の世界と子供の世界が取り巻く周りの人々、社会、風習といったものとの絡みの中で幾重にも解釈することができる。子供である姉弟(原作では兄妹である)を中心に少し感想をと想う。

20世紀初頭の英国、ロンドンから遠く離れたある田舎に広大な土地を所有する地主の邸宅がある。しかし、その主夫妻が交通事故で亡くなってしまう。残された幼い姉フローラ(ヴァーナ・ハーヴェイ)と弟マイルズ(クリストファー・エリス)、家政婦のグロース夫人(ゾーラ・ハード)、美貌の家庭教師ミス・ジェスル(ステファニー・ビーチャム)、そして、下男クィント(マーロン・ブランド)、他にも使用人はいるけれど主要な登場人物はこの5人。後見人の伯父役にはハリー・アンドリュース。原作では描かれていない世界を、人間の持つ心のあらゆる面を織り込めながら美しい森やお屋敷、音楽を伴いお話は展開される。

粗野ながら色々なものを作ってくれたりお話してくれる下男クィントをフローラもマイルズもとても慕っている。お勉強や礼儀作法はミス・ジェスルが教えるけれど、馬乗りや凧に風船をつけてマイルズを宙に飛ばしたり、お人形や馬を作ってくれたり(クィントはとても器用な人)、彼らの大人の世界の疑問に彼なりの言葉をしっかり返してくれる。しかし、子供たちはその純白の心ゆえに、彼の言葉をすべて鵜呑みにして信じている。そして、クィントとミス・ジェスルが愛し合っているが、そこには複雑な心理の葛藤がある。けれど、まだ子供であるフローラとマイルズにはその愛や憎悪、女のサガというようなミス・ジェスルの心を読みとることはできない。そして、悲劇の結末へと...。でも、死によって愛する者たちが一緒に居られると信じている。

フローラとマイルズ役のふたりがとても可愛い。姉のフローラの目つきも妖しげで場面を印象つける。また、可愛い少年マイルズの屈託のない笑顔が多いなかでの終盤の行為はさらに強烈に心に残り、色々と考えさせられるものがる。素晴らしい子役たちだと想う。また、クィント役のマーロン・ブランドは『ゴッドファーザー』で知った私なので、その後にこの映画を始め、あのドン・コルレオーネのイメージとは異なる役柄が新鮮だった。あれから、私も出演作を観てゆく中、いつも感じること。マーロン・ブランドの演技はどんな役でもなにか安心感のようなものがある。とりわけ、この粗野で下男という身分、教養もなく馬小屋を与えられているクィントを魅力たっぷりに演じてみせる。子供たちも慕うのは当然に想う。クィントの屈折した心や貧しい境遇、人間の持つ善と悪をとても寛容で大らかにあのお声と風貌で演じる。”包容力”というようなものをいつも感じる。なので、観ていて安心感があるのだろうか...。演技の外からの魅力でもあるのだろう。

マーロン・ブランドはこの『妖精たちの森』や『ラストタンゴ・イン・パリ』の翌年、あの『ゴッドファーザー』となるけれど、公開は『ゴッドファーザー』が先だったようだ。私は、50年代から70年代前半辺りのマーロン・ブランド出演作品に好きなものが幾つもある。また、英国女優のステファニー・ビーチャムも好き!

「人間というものは本来、だれもが純真なままに生まれてくるものだ。それが、大人の世界の常識や規範に染まって、いつの間にかアカをつけていく。もちろん、純真無垢がいいか、わるいかは別問題で、この作品は、そのような子どもの世界と、大人の世界のはかり知れない落差を教えてくれるだろう。それはきわめてミステリアスな領域である...。」  (マイケル・ウィナー監督)

妖精たちの森 (ユニバーサル・セレクション2008年第7弾) 【初回生産限定】
妖精たちの森/THE NIGHTCOMERS
1971年・イギリス映画
監督:マイケル・ウィナー 原作:ヘンリー・ジェイムズ 脚本:マイケル・ヘイスティングス 撮影:ロバート・ペインター 音楽:ジェリー・フィールディング 出演:マーロン・ブランド、ステファニー・ビーチャム、ヴァーナ・ハーヴェイ、クリストファー・エリス、ゾーラ・ハード、ハリー・アンドリュース、 アンナ・パーク