『若草物語』 マーヴィン・ルロイ監督(1949年版)とジリアン・アームストロング監督(1994年版) 原作:ルイザ・メイ・オルコット

cinema-chouchou2009-10-08


《「若草物語」のこれまでの纏め》
★ジョーがある雑誌に投書した詩であり、ベーア先生との絆を深めることになる詩。ジョーはまずい詩だと想っていたけれど、ベーア先生の心にはしっかり届いたのだ。この詩は、屋根裏部屋の四人の姉妹の名を記した引き出しを見ながら書いたもの。ベスの死は姉妹の中でもジョーには特別な哀しみだったのだと想う。泣いてばかり過ごしていた勝気なジョー。素敵なジョーはオルコットの分身のよう。『愛の四少女』(この邦題が今も大好き!)と題された古いご本は私が小学生になった頃のもの。今では『続若草物語』として手にすることができる。四人の若草姉妹たちに愛が訪れるまでのお話。ベスがいないと想うとやはり悲しいけれど。

『屋根裏部屋にて』の「ジョー」の詩

首のぬけた人形 すりきれたノート 鳥もけものも、 いまは何もいわない 幼い日 フェアリーの国からもって帰った かずかずのえもののなつかしさよ とおい日の思い出の甘さよ 書きちらした詩 まずい物語 あたたかかったりつめたかったりの 気まぐれなたくさんの手紙 りこうぶった少女の日記は まだ若いのに老けこんでしまった女の名残りだろうか ただひとり、さびしく家をまもっている女 「愛にあたいする者になれ、そしたら愛は来るであろう」  だれかがくりかえす。 真夏のにわか雨に似た、かなしい言葉をくりかえす 女はしずかに耳をかたむけている

関連:『屋根裏部屋にて』の「ジョー」の詩★『愛の四少女(続若草物語)』より 作:ルイザ・メイ・オルコット : クララの森・少女愛惜

2009.10.8.

若草物語/LITTLE WOMEN
1949年・アメリカ映画
監督:マーヴィン・ルロイ 原作:ルイザ・メイ・オルコット 撮影:ロバート・プランク、チャールズ・ショーンボーム 音楽:アドルフ・ドイッチ 出演:ジューン・アリソン、マーガレット・オブライエン、エリザベス・テイラージャネット・リー、ピーター・ローフォード、 メアリー・アスター、C・オーブリー・スミス、ロッサノ・ブラッツィ

ルイザ・メイ・オルコットの自伝的な内容も含まれている不朽の少女小説であり児童文学でもある『若草物語』はいったい幾度映画化されているのだろう。このマーヴィン・ルロイ監督の1949年作品は既に4度目の映画化だそうだ。アニメや日本映画も含めると6作品の『若草物語』を観ているのだけれど、今のところ、その中で一等好きなものはこの1949年のもの。この頃ならではのテクニカラーが好きだし、お衣装や小物、舞台セットなどが実に美しい!また、それぞれ性格の異なる四姉妹たちも。

原作や他の映画と異なるのは、三女のベスと四女のエイミー(エミー)を変更している点。それは、当時、名子役として人気を博していたマーガレット・オブライエンがエリザベス・テイラーよりも年少であり、幼くして病に死す内気な少女ベスを演じることで。名演技に涙したお方も多いのだろう。原作では姉妹たちは皆まだ10代。次女のジョーを演じるジューン・アリソンは当時32歳だったというけれど、ハツラツとした快活なジョーを演じている。長女のメグ役のジャネット・リーは原作のイメージと私は少し違うのだけれど、美しいし好き。リズは撮影当時16.17歳で既に完璧な美を誇っている。エイミー役にお似合い。初めて観た時に少し違和感があったのは、多分リズなのにブロンドの髪の少女だったからだと思う。こんなにブロンドのリズは他の作品では拝見出来ないのではないだろうか。縦ロールの髪も素敵だけれど、終盤のローリーと結婚する場面(ヨーロッパから帰国後)の後ろで纏めた美しいヘアスタイルの方がお美しいお顔立ちが際立つように思う。

舞台は19世紀半ば。姉妹の中でも中心はジョー。裕福ではないが姉妹はお互いを思いやり、両親を尊敬し愛している。また、隣人やご近所の人々への慈愛も深く、その中でのそれぞれの乙女心。時代は随分違えども、ある時期の少女たちには共通するものがいつもある。なので、100年以上前の小説がいつまでも愛され続けるのだろう。ジョーは個人的にはジリアン・アームストロング監督作品(1994年)でウィノナ・ライダーが演じたものがお気に入りなのは今も変わらないけれど、どれを観ても最後は感動で泣いてしまう。

2009.8.10.

若草物語:LITTLE WOMEN
1994年 アメリカ映画 

監督:ジリアン・アームストロング 出演:スーザン・サランドンウィノナ・ライダークレア・デインズ、トリニ・アルバラード、キルステン・ダンスト、サマンサ・マシス、ガブリエル・バーンクリスチャン・ベイル、エリック・ストルツ

ルイザ・オルコットによる原作は有名。そして、映画化も今作で4度目となるもの。何度観ても泣いてしまう。主人公の次女ジョー役のウィノナ・ライダーが生き生きとあまりにも素晴らしい!母親役がスーザン・サランドンである事も嬉しいキャスティングなのだけれど、何度も観ているとみんなそれぞれ素敵で仕方がない。そんな映画。原作に忠実なストーリー展開なので19世紀半ばのお衣装や家具などを見ているだけでも美しい。

キルステン・ダンストがエミーの幼女時代役で出演しているのも見所かもしれないけれど、私は実は三女の死んでしまうベスを演じるクレア・デインズがとても好きだったりする。ジョーとは対称的な女性(少女)を演じている。

ウィノナを中心に他の出演者皆が存在感があって鮮やかな傑作に思う。特にガブリエル・バーンの演じる貧乏な哲学者フレデリックには驚いたものだ。だいたい、彼の印象は強烈でどこか悪魔的というか凄味を感じさせるイメージが強かった。それは、あまりにもかの「ゴシック」(ケン・ラッセル)でのバイロン卿の印象が色濃く焼き付いているからだと想像出来る。まだ未見ながら「仮面の男」にもジェレミー・アイアンズと共に出演している様なので早く観てみたいと思っているところ。ここでのフレデリックの様な人間(性別を問わず)がとても好きだ。なので、最後にジョーと結婚して学校を開校するという終わりは実に美しく胸に響く。

2005.2.13.

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