ホープ・サンドヴァル:HOPE SANDOVAL /MAZZY STAR

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ホープ・サンドヴァル:マジー・スター
「MAZZY STAR/ SO TONIGHT THAT I MIGHT SEE」
1993年

英国を中心にヨーロッパの音楽たちに魅了されてきた私。でも、ニューヨークだけは特別に好きな米国の宝庫だった。それは洋楽に目覚めて直ぐの事なので理由もきっかけもよく分からない。思い当たるものと言えば、一枚のパティ・スミスの写真とアンディ・ウォーホルを取り囲む人々への関心が直感的なものだったこと。そして、ボウイとの交友関係ともリンクしていたルー・リードやニコ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの音楽に出会った。そして、VELVET MOONという店名の由来をよく訊かれるけれど、当然!VELVET UNDERGROUNDが居る。

「ヴェルヴェットの子供達」と呼ばれるフォロワーは今も世界中に存在し継承されている。そんな音達に出会うと嬉しく、そしてすんなりと聴き入る事が出来る。理由など分からないけれど。マジー・スターというバンドに出会ったのは1990年の1stアルバム「SHE HANGS BRIGHTLY」。その前身バンドとなるオパールから引き続いて、その気怠いサイケデリックな妖気は自然と心地良く入ってきた。ギタリストのデビッド・ロバックのギター音色が好き。そして、決定的なのは紛れもなくホープ・サンドヴァルのヴォーカルにある!と断言出来る。この人達の作品リリースはとてもインターバルが長い。でも、その間ずっとこれまでの作品を聴き続けて来たし、これからもそうだと思う。(ケイト・ブッシュの新作を待てるのだから数年位どうって事は無いのだ。)

オパールのケンドラ・スミスも好きなヴォーカリストだけれど、サンドヴァルのお声には刹那的な甘い蜜の香気が漂いたまらない。私は所謂「癒し系」という言葉が好きでは無い。でも、音楽や芸術を愛する人々はそれらの中に、それらとの出会いによって癒される事があるとは思っている。私も私自身の心の雑音が静寂さを取り戻す時の音楽、それを求める時の音楽が有るように思う。そして、サンドヴァルのお声を聴くと安堵する。時に無性に涙が止まらない時もあるけれど、それでも彼女のお声は沁み込んでくるのだ。魔性のエーテルだと思う。倦怠と寂しさを伴いながらも優しいのだ、とても。ゆっくりと内部への瞳孔はやや覚醒的で夢見心地に。元気で明るい音楽では決して無い。二者択一(オルタナティヴ的)音楽であり暗くて嫌いだと思う方も居られるであろう。でも、私は彼等の音楽、サンドヴァルのお声を求めてしまう。

此処では2ndアルバムの「SO TONIGHT THAT I MIGHT SEE」を選んでいるけれど、3rdアルバムの「AMONG MY SWAN」も大好き!そして、2001年にサンドヴァルが新しく始めたプロジェクト:HOPE SANDOVAL & THE WARM INVENTIONSは私が2000年代に入ってリリースされたどんなアルバムよりも聴き続けているお気に入りアルバム。この作品はMY BLOODY VALENTINEのコルム・オコーサクとの共同プロジェクトで、JESUS &MARY CHAINのカバー曲や、英国アコースティック・ギターの大御所!バート・ヤンシュも参加した曲まで収録されている。

サンドヴァルの甘い気怠さはお声だけではなく容姿や表情にも充分なまでに。なので、さらに好きなのだと思う。物憂い翳りが好きだから。私なりの好き勝手なお気に入りの女性ヴォーカル系譜らしきものが脳内で縺れ合いながら存在する。その中に、このホープ・サンドヴァルという美しき歌姫はニコからロベールにまで繋がるものとして位置している。これらのお声達は私の脳内から胸の奥底に住む大切な美声なのだろう。