カトリーヌ・ランジェ:CATHERINE RINGER/LES RITA MITSOUKO

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カトリーヌ・ランジェ:レ・リタ・ミツコ
「マーク&ロバート/LES RITA MITSOUKO / MARC & ROBERT」

NEW WAVEという80年代のシーンの真っ直中にいた私は、今でも当時の鮮烈なる出会いが何処かに住み続けている。英国の音楽に留まらず他のヨーロッパから、N.Y.からと貪欲に探し求めていたものだ。ちょっと変わった音楽たちを"愛しのへんてこりん"と呼んでいる。そんな中にこのフランスのレ・リタ・ミツコとの出会いもあり、彼らの魅力は色褪せることなく現在進行形で大好きなユニットなのである。ゲランの香水からその名前が付けられたというレ・リタ・ミツコは、素晴らしきヴォーカリスト!カトリーヌ・ランジェとフレッド・シシャンの夫婦ユニット。彼らのファッションや信念の強い言動にもとても共感を受ける。カッコイイ!カップルだなって思うのだ。

さて、カトリーヌ・ランジェのヴォーカル!音域の広い多様な表現力。高音で歌う曲も有れば低音で歌う曲も。それらの全てが色彩豊かなカラフル・ポップなのだ。彼らの音楽は様々なエッセンスが入り混じっていて、その無国籍風な楽しさがいつも嬉しい。エレポップ、シャンソン、ロック、ファンク、ラテン音楽的な要素をとても上手く取り入れながらも、自らの世界観を築いていると思う。どの曲でも、カトリーヌの表現者としての存在感は凄い。

1982年にシングル・デビュー。この「マーク&ロバート」は1988年の3rdアルバムで敢えてこの作品を此処で選んだのは、スパークスと共演しているから!デュエット曲も3曲収録しているのだ。この共演は飛び上がる程嬉しかった。初期からレ・リタ・ミツコのお二人が影響を受けてきたアイドル的存在としてスパークスの名前が挙げられていたものだ。デヴィッド・ボウイイギー・ポップエディット・ピアフの名前と並んで。そう言えば、ボウイやイギーのファンであるレオス・カラックス監督の「ポンヌフの恋人」の主題歌はこのレ・リタ・ミツコだった。ピアフはもう居られないので、後彼らとの共演が待たれるのはボウイだけという現在。その夢の共演を待ち遠しくしているのは私だけでは無いはず。

カトリーヌ・ランジェはどの様な曲でも自分の世界で歌い上げるだろう!そんな柔軟性と表現豊かな歌唱力の持ち主なので。アコースティック・ライヴの作品でもそのヴォーカルの存在感を再確認したものだ。彼らは今も自らの世界を産業ポップに陥る事無く、かつポップの持つ魅力を充分に発揮している貴重な存在だと思う。ジャン=リュック・ゴダール監督は「右側に気をつけろ」の中で、スタジオでの彼らを映し出した。ゴダールはやっぱり凄い!嘗て「ワン・プラス・ワン」であの時期のローリング・ストーンズのレコーディング風景を撮ったのも驚異だと思う。

彼らの素敵な頑固さの様なものが好き。それだけの実力がある方々なのでこれからも怯まない彼等から目が離せない。セルジュ・ゲンスブールを批判する事も有ったけれど、ゲンスブールの業績に敬意を表することも忘れない(「システム D」や「ゲンスブール・トリビュート」でカバーも聴ける)。そんな潔さも気持いい。もう20年も経ったけれど、作品を追う毎にますますレ・リタ・ミツコ、カトリーヌ・ランジェのヴォーカリストとしての力量、表現力に魅せられ続けているのである。