『スプレンドール』 エットレ・スコーラ監督 (1989年)

スプレンドール (トールケース) [DVD]
スプレンドール:SPLENDOR
1989年 イタリア/フランス合作映画 エットレ・スコーラ監督

出演:マルチェロ・マストロヤンニ、マッシモ・トロイージ、マリナ・ヴラディ、パオロ・パネッリ、パメラ・ヴィッロレージ
音楽:アルマンド・トロヴァヨーリ

JRの惨劇列車事故のニュース...この映画を深夜観た。色んな思いで涙が止まらなく寝入ってしまった。この日はこうして、やっぱり映画に救われたのだと思う。それも、「ニュー・シネマ・パラダイス」あるいは「映画に愛をこめて/アメリカの夜」(作品中にも登場する)と同じように、映画を愛してやまないあの視点があまりにも優しいのだ。

マルチェロ・マストロヤンニとマッシモ・トロイージは、エットレ・スコーラ作品の前作「BARに灯ともる頃」に続いての共演。このお二人演じるジョルダンとルイジ、そしてシャンタル(マリナ・ヴラディ)の3人がイタリアの田舎町にある老舗映画館「スプレンドール」(輝きの館)を守っているのだけれど、嘗ての隆盛は年月と共に衰退してゆき閉館となる...。

マストロヤンニは本当に素晴らしい!って拝見する度に思ってしまう。多くの名画に出演されたけれどスコーラ作品にも欠かせないお方だった。この「スプレンドール」の頃で65歳、すっかり恰幅良くなられているけれどあの柔和な雰囲気が大好きなのだ。前作では親子役だったマッシモ・トロイージもお若くしてお亡くなりになっている。このお二人の死はスコーラ監督にとってとても大きな哀しみだったのだと思える。10年程経てようやく「星降る夜のリストランテ」を製作。どの作品にも優しさと色んな人々の素敵な顔を描くのでほんわかとするのだ。そして、その優しさに救われる。

素晴らしき哉、人生!」(この名画も登場する)、こういう事なのだと思う。人生は平穏な日々ばかりではないけれど。トリュフォーベルイマンフェリーニ...古い映画「メトロポリス」に「プレイタイム」...とチラっと数々の名画が挿入され、映画ファンは楽しくて仕方がない。そんな気持ちを監督が存分に味わいながら撮られていたのだと思う。最後の閉館日に長年通い続ける初老のお二人、そして「スプレンドール」が無くなるというので詰めかける町の人々。最後は満席以上の館内となり、6月なのに「メリー・クリスマス!」と雪が舞う館内...そして、粋なエンディングのテロップ。モノクロとカラーの使われ方も好きだ。日本も同じく老舗映画館が次々と閉館してしまう。そういう私もテレビやレンタル屋さんのお世話になっているのだけれど。母に連れられて行った日々、一人で大急ぎで駆け込んだ日々、友人とワクワクしながらあのスクリーンに魅入った、ポップコーンやチョコレートと一緒にそんな記憶は忘れられない想い出である。そんな色んな思い出が駆け巡り、そして「やっぱり、映画って本当に素晴らしい!」って痛感するのだった。