『ホテル・ニューハンプシャー』 トニー・リチャードソン監督 原作:ジョン・アーヴィング (1984年)

cinema-chouchou2007-01-15

これまた、何から...というくらい好きな映画。まだ10代で現代アメリカ文学のことなど全く興味も持てずに無知極まりない頃。ある友人がジョン・アーヴィングのこと、『ガープの世界』の映画が最高だと嬉しそうにお話してくれた。そして、この『ホテル・ニューハンプシャー』は激推薦され観たもの。原作は後から読み、そしてもう20年以上経った今もふと観たくなって観てしまう。当時の感想は、好きなジョディとナスターシャの共演♪というだけで彼女たちを観ていた。ところが、私も年を重ねる中で両親の死や飼っていた犬の死、変わった愉快な友人達との出逢いや別れ...まだまだ青いけれどなんとなく”人生って色々あるんだなぁ...”と悲喜交々なものを感じている。そして、出来るだけ人生讃歌な気持ちでいたいと思えるようになった。この作品にはそんな色んなことが詰まっていて、それもテンポ良く進み、最後は死んだ人々も一緒に『ホテル・ニューハンプシャー』の美しい緑の芝生の中で彼らは走り踊り笑っている。背が延びない少女作家となり自殺してしまうリリーの背がグ〜ンと伸び、ジョンがリリーなら言うよ、”人生はおとぎ話よ。”って。カテゴリーは文学作品に入れたけれど、これはもう最高のファンタジーの世界。そして、家族というものを強く感じさせられ、色んな悲劇が起こるけれども夢を捨てないパパは盲目になっても素敵な笑顔で生きている。観終えたあと、とっても気分が良くなる。

キャスティングも素晴らしい!当時大人気だったロブ・ロウ(私はあまり興味がなかったけれど)も今観ると悪くないし、中心人物のフラニー役のジョディ・フォスターの演技力と存在感、そして、スージー・ベアことサラー・ローレンス役のナスターシャ・キンスキーの存在感、さらに二役で登場するマシュー・モディン(珍しく悪役なのだけれど演技派だし、何をしてもかっこいい!)と私のお気にリの役者方がいるのも嬉しい。フラニーとパパの役は監督は当初から決めていたらしい。スージー役のナスターシャは撮影に入る少し前に決まったという。それも、ジョディが監督に語った一言で。”ナスターシャって、自分のことを魅力がないと思ってるの。信じられる?”と。私も同感!信じられないけれどそんなナスターシャが大好き〜♪でそんなジョディも大好き!若手の実力派と生き生きした感じの素敵なキャスティング。近親相姦やレイプ、自殺や過激派という問題も出てくるけれど、長男はゲイで妹は背が延びない、暗い過去の傷を隠すために熊になっているスージーはフラニーに恋をするし...もう凄いことになっているけれど、最後は人生讃歌。アーヴィングの原題は『KEEP PASSING THE OPEN WINDOWS』。ホテルの多くの窓たちは象徴的なのだろう。開いた窓を見過ごさないで生きよう!飛び降りるなってことだと。人生はおとぎ話。嫌なことに次々と遭遇しやるせない。でも、嘘でもいいから楽しく生きようよって。監督はイギリスのトニー・リチャードソン(元ヴァネッサ・レッドグレイヴのご主人でもある)。監督はアーヴィングを英国のディケンズに近いと語っていた。そして、アーヴィングは自らのことを語る中で”私は現代の文学の主流から外れている。でも、現代の文学が真の文学の主流から外れているのです。”と。既成概念などどうでもいいのだともこの作品は伝えてくれる。シリアスなことも描きながらも軽やか。なのでとっても爽快!

ホテル・ニューハンプシャー ホテル・ニューハンプシャー
監督:トニー・リチャードソン 出演:ジョディ・フォスターロブ・ロウナスターシャ・キンスキーボー・ブリッジス (1984年・アメリカ映画)