『セリーヌとジュリーは舟でゆく』 ジャック・リヴェット監督 (1974年)

cinema-chouchou2007-02-01


ヌーヴェル・ヴァーグとは、今もこうして生き残って、映画を撮り続けていることです。フランソワ・トリュフォーの死だけは、ほとんど不慮の出来事で、大きな損失でしたが・・・。”と嘗てルイ・マルは語っていた。そのルイ・マルももう居られない。一時期のことではない、継続されるものって好きだ。お歳でいうと、エリック・ロメールの次に年長監督であるジャック・リヴェットジャン=リュック・ゴダールも健在だ。後追いながら同じ時代を生きているのだと思うと嬉しい。でも、リヴェット作品は最もお目にかかる機会が少ない日本。未公開作品も多いのでずっと不満でいる。おそらく『美しき諍い女』が最もヒットした作品ではないのだろうか?私が特に好きな傾向は文学作品とか演劇というような匂いのものが多い。なので、フランス映画に好きなものが多いのかもしれない。イギリス映画のあの屈折した美しさもあるけれど。

限られた中で観る機会に恵まれたリヴェット作品の中で一等好きなのは即答でこの『セリーヌとジュリーは舟でゆく』。3時間以上の大作ながらワンダーランドなので時間等問題にならない程、楽しい。でも、好き嫌いは分かれる作品かも。基本的にルイス・キャロル好きの私は「不思議の国のアリス」や「鏡の国のアリス」のモチーフのあるものはすんなり入り込めるという体質。それも、リヴェット特有の魔法仕掛けのようなおとぎ話。好きな女優さまが揃っているのも嬉しい。特にジュリエット・ベルトとビュル・オジェは大好き!ベルトの早すぎる死は惜しまれてならない。また、まとまりのないことをツラツラと書いている...。図書館勤めのセリーヌがスカーフと眼鏡を落とす。それを公園のベンチで魔術書を読んでいたジュリーが拾い彼女を追いかける。白兎さながらの入り口。ここから奇妙な展開が繰り広げられる。魔法のボンボンを食べるとある館に行ける。そのお屋敷の領主は鰥夫で可愛い娘がいる。そしてソフィとカミーユという二人の美女と共に。セリーヌとジュリーはボンボンを食べないとそのお屋敷に入れないので試行錯誤が繰り返される。また元に戻ったり。しかし、一人の女性がその幼い少女を毒殺しようと企んでると知り、二人は少女を助け出そうとする。そのお屋敷がまた不思議で、ヴィクトリア朝時代風で幽霊屋敷のような佇まい。主人は監督でもあるバルベ・シュローデル(バーベット・シュローダー)。やたらとすぐに気絶する女性カミーユのビュル・オジェもここでも素敵過ぎ★少女の救出成功から船にのり漕ぎ出すのだが、そこでまた・・・。

何とも不可思議な謎の多いお話ながら、現実と夢幻の往来するその世界は正しくファンタジイ♪セリーヌとジュリーのお二人が実に魅力的だし。こういうハッキリしない余韻を残す作風は大好き!リヴェット監督は特に変わった創り方をされるらしく、出演者の各人に結末などを知らせないそうだ。その場その場で創り上げていくような感じなので即興的な効果もあるのだろう。なので、役作りを十分して撮影に挑む必要もなく、逆にそのようなタイプの役者様はリヴェット映画には必要とされていないかのよう(サンドリーヌ・ボネールの「ジャンヌ・ダルク」は例外のようだけれど)。そういう自由さが不思議な魅力となるのだろう。脚本に出演者の名も共同で記されているのもそういうことだろう。とても、お芝居、演劇的な風景が浮かぶ。長い作品で1度だけでは進行を把握しにくいのだけれど、ハマルと愉快極まりない♪幻想的だし耽美とも言えるけれど、とってもファンタジック!それも最高級のファンタジー映画。アリスを描いた少女映画も多数あり、それぞれ好き。でも、このユーモラスな魔法の世界とはまた異なる魅力♪

関連:『セリーヌとジュリーは舟でゆく』 (ジャック・リヴェット監督) : クララの森・少女愛惜

セリーヌとジュリーは舟でゆく [DVD]
セリーヌとジュリーは舟でゆく:CELINE ET JULIE VONT EN BATEAU
1974年・フランス映画
監督:ジャック・リヴェット 出演:ジュリエット・ベルト、ドミニク・ラブリエ、ビュル・オジエ、マリー=フランス・ピジェ、バルベ・シュローデル(バーベット・シュローダー)、ナタリー・アズナル