『ファスビンダーのケレル』 ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督 (1982年)

cinema-chouchou2007-08-19

夏に弱いのは毎年の事ながら、今年は梅雨が長く夏の暑さも持ち越されている感じ。映画は観ているけれど更新を怠ってしまいがち。少し前に再見した『ケレル』。ちょっと、老年期に入る前のジャンヌ・モローが観たくなって久しぶりに観たもの。今さら、という感じだけれど、豪華国際俳優陣!原作はジャン・ジュネの『ブレストの乱暴者』。そして、ファスビンダー監督の遺作(残念!)。好き嫌いは分かれる作品だろうけれど、私は間違いなく大好き。ジュネが好きだということも大きいけれど、この映画はかなりファスビンダーの世界、感性と融合されたものに思う。人口的な雰囲気・空間は意図的なのか、やや不安定な動きをされるかの様な役者方。波止場、水兵たち、売春宿...そこの経営者(男色家ノノ)の妻リジアヌ役がジャンヌ・モロー。退廃的で美しい★

リジアヌが劇中で歌う、「誰もが愛するものを殺す」と。ジュネの小説のあの噎せ返る花の匂いが好き。そして、『ケレル』も熱帯的な空間を彩る色たち(オレンジ、イエロー、ブルー)と共に、犯罪に至るまでの空間が好き。ホモセクシャルの映画が生理的に苦手な友人もいる。ロリィタ映画も同様に苦手な友人も。でも、どうしてかとお話を聞くことは私がどうして好きなのか、という事にも繋がる事が多いので楽しい。ニューヨーク・タイムズ紙などは、批判的なコメントでもあった。でも、的確に冒頭の活字に触れて言及されていた。ファスビンダー監督は《ジュネの原作に基づく映画》とせず、《関する映画》だと。なるほど!と思う。ご自分の死を知っていたかのように私はジュネの原作映画というよりも、ご自身も男色家だったファスビンダーならではの遺作に相応しい美しい作品に思える。


ファスビンダーケレル:QUERELLE
監督:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー 出演:ブラッド・デイヴィス、ジャンヌ・モローフランコ・ネロ、ギュンター・カウフマン (1982年・西ドイツ/フランス合作映画)