『サマーストーリー』 ピアーズ・ハガード監督 原作:ジョン・ゴールズワージー 『林檎の木』 (1988年)
サマーストーリー/A SUMMER STORY
1988年・イギリス映画
監督:ピアーズ・ハガード 製作:ダントン・リスナー 原作:ジョン・ゴールズワージー 脚本:ペネロープ・モーティマー 撮影:ケン・マクミラン 音楽:ジョルジュ・ドルリュー 出演:ジェームズ・ウィルビー、イモジェン・スタッブス、スザンナ・ヨーク、ジェローム・フリン、ソフィー・ウォード、ケン・コリー
最初はゴールズワージーの原作は新潮社版で読んだように記憶しているけれど、今回は集英社文庫で久しぶりに頁を捲りながら不思議な感傷に浸っていた。この原作を映画化した『サマーストーリー』も大好き!なもので、ミーガンを演じるイモジェン・スタッブスとアシャーストを演じるジェームズ・ウィルビーがどうしても浮かんでしまう。原作を大きく変えてはいないと思うけれど、林檎の木の香りはなく、でも、村の自然の緑の匂いに溢れた映像美と秀逸な俳優陣による、叙情的なロマンスの秀作だと想います。
「 りんごの木、歌をうたう少女たち、金色の木の実 」
この「エウリピディのヒッポリュトス」(マレー訳)を序文に持つ、英国文学ジョン・ゴールズワージーの『林檎の木』。このギリシャ悲劇を題材に悲恋物語が描かれる。私は少女ミーガン(メガン)の心の清らかさ(純粋さゆえの熱情)と、美しい自然の風景の中の可憐に輝く乙女の姿が好き♪古代ギリシャ人は”林檎の木”を楽園の象徴としていたそうだ。そして、この少女ミーガンに恋をする青年アシャースト。当時の英国の階級制度(身分の違いゆえ成就せぬ恋はどれ程あったのだろうか...)という社会の規律、そうした障害は純粋な少女の心を痛めるのみ。ミーガンは苦悩から自殺してしまう。でも、カトリック教徒の自殺は許されておらず、ミーガンのお墓は教会の墓地には埋葬されず農地の十字路に作られていた。迎えに来なかったアシャーストはステラと結婚し、25年ぶりに懐かしい荒原地帯を訪れその十字路のお墓を見つけるのだった。嗚呼、号泣!報われない恋は昔も今もあるけれど...。