『カリガリ博士』ドイツ表現主義名画の金字塔
カリガリ博士:DAS KABINETT DES DR. CALIGARI (1919年・ドイツ映画) 監督:ロベルト・ウイーネ 製作:エリッヒ・ポマー 脚本:ハンス・ヤノヴィッツ、カール・マイヤー 出演:コンラート・ファイト、ヴェルナー・クラウス、リル・ダゴファー、フリードリッヒ・フェーヘル、ハンス・ハインリッヒ・フォン・トワルドフスキー |
オランダ国境に近い北ドイツに、カリガリ博士(ヴェルナー・クラウス)の眠り男(夢遊病者)ツェザーレ(コンラート・ファイト)の予言を看板にした見世物小屋があった。学生のアランとフランシスもそこに集まっていたが、次第にカリガリに対する疑念を抱くようになり、フランシスは疑惑究明に乗り出す・・・というお話(原作と映画の結末は異なる)。
恐怖映画の源流となるこの特異な作品。全て屋内での撮影で人工的な光と影。特殊なメイクやお衣装、舞台装置や字体。色々なところから醸し出される不気味な歪み。ヒトラー政権前の作品ながら後に専制君主を煽るものとされたこともある。その逆だとも言える。機械や機械人形、動きや大きさ、地面と全く平行ではない画面。かなり怖くてシュール。この舞台セットを担当したお方は画家のアルフレート・クビーンで、後のシュールレアリスム(シュールレアリスト)の先駆者的存在のお方。ツェザーレ役のコンラート・ファイトはこの後、ハリウッド映画でも活躍された。こうしてスタッフたちの顔ぶれを拝見すると、如何にもアート映画、前衛映画であるとも言える。当時の観客方の恐怖感はどんなものだったのだろう!と想像してしまう。90年近く前の映画を今DVDで安易に観ることができる私。そして、谷崎潤一郎や江戸川乱歩や夢野久作...という好きな日本の作家たちの作品を連想したりする。
※2007年6月9日に綴ったもので、解説は「映画データべース」も参照させて頂きました。さて...私が観たのはどのヴァージョンだったのだろう。知らないうちにDVDが幾種類か発売されており、ヴァージョンも異なるようなのでハテ?元来サイレント映画でドイツ語のものがオリジナルだろうけれど、このお安い500円のDVDは、”新訳版”とあるので気になるところ。カテゴリは”恐怖映画”に入れましたが、アート・シュール映画でもある画期的な作品!