『カリガリ博士』ドイツ表現主義名画の金字塔

カリガリ博士 新訳版カリガリ博士:DAS KABINETT DES DR. CALIGARI
(1919年・ドイツ映画)
監督:ロベルト・ウイーネ 製作:エリッヒ・ポマー 脚本:ハンス・ヤノヴィッツカール・マイヤー 出演:コンラート・ファイト、ヴェルナー・クラウス、リル・ダゴファー、フリードリッヒ・フェーヘル、ハンス・ハインリッヒ・フォン・トワルドフスキー
カリガリ博士』(Das Kabinett Des Dr. Caligari)は1919年制作のドイツ、サイレント期の革命的な映画であり、ドイツ表現主義を世界に知らしめた画期的な作品として後の各国の監督たちに影響を与え続けているもの。原作は、チェコ出身の詩人ハンス・ヤノヴィッツと、オーストリア人で田舎芝居で役者をしたり即興漫画を書いたりしていたというカール・マイヤー第一次大戦後ベルリンで知り合った事から、この全体主義への警鐘を孕みつつその表現の余りの不気味さに逆の作用もある幻想譚は生まれた。監督はロベルト・ヴィーネ。当初はフリッツ・ラングに持ち込まれたもの。私はこの古い古い映画のことを如何に知り得たかというと、またしてもデヴィッド・ボウイさまのインタビューにて。ボウイ自身もかなりの数の絵を描いていてドイツ表現主義との関わりはとても大きい。さらに映画ファンでもあるお方なので相当お詳しい。ボウイとの関係はまた『ボウイ館』が相応しいのだけれど、まだ上手く綴れそうにはないので、色々と繋がるものたちを鑑賞していると段階。

オランダ国境に近い北ドイツに、カリガリ博士(ヴェルナー・クラウス)の眠り男(夢遊病者)ツェザーレ(コンラート・ファイト)の予言を看板にした見世物小屋があった。学生のアランとフランシスもそこに集まっていたが、次第にカリガリに対する疑念を抱くようになり、フランシスは疑惑究明に乗り出す・・・というお話(原作と映画の結末は異なる)。

恐怖映画の源流となるこの特異な作品。全て屋内での撮影で人工的な光と影。特殊なメイクやお衣装、舞台装置や字体。色々なところから醸し出される不気味な歪み。ヒトラー政権前の作品ながら後に専制君主を煽るものとされたこともある。その逆だとも言える。機械や機械人形、動きや大きさ、地面と全く平行ではない画面。かなり怖くてシュール。この舞台セットを担当したお方は画家のアルフレート・クビーンで、後のシュールレアリスムシュールレアリスト)の先駆者的存在のお方。ツェザーレ役のコンラート・ファイトはこの後、ハリウッド映画でも活躍された。こうしてスタッフたちの顔ぶれを拝見すると、如何にもアート映画、前衛映画であるとも言える。当時の観客方の恐怖感はどんなものだったのだろう!と想像してしまう。90年近く前の映画を今DVDで安易に観ることができる私。そして、谷崎潤一郎江戸川乱歩夢野久作...という好きな日本の作家たちの作品を連想したりする。

※2007年6月9日に綴ったもので、解説は「映画データべース」も参照させて頂きました。さて...私が観たのはどのヴァージョンだったのだろう。知らないうちにDVDが幾種類か発売されており、ヴァージョンも異なるようなのでハテ?元来サイレント映画でドイツ語のものがオリジナルだろうけれど、このお安い500円のDVDは、”新訳版”とあるので気になるところ。カテゴリは”恐怖映画”に入れましたが、アート・シュール映画でもある画期的な作品!

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