『乙女の祈り』 1994年 ピーター・ジャクソン監督

cinema-chouchou2008-02-01

乙女の祈り/HEAVENLY CREATURES
1994年・ニュージーランド映画
監督:ピーター・ジャクソン 脚本:ピーター・ジャクソン、フランシス・ウォルシュ 撮影:アラン・ボリンジャー 音楽:ピーター・ダゼント 出演:メラニー・リンスキーケイト・ウィンスレット、サラー・パース、クライヴ・メリソン、ダイアナ・ケント

ピーター・ジャクソン監督の映画『乙女の祈り』、実に印象的な作品だった。ケイト・ウィンスレットは『ある晴れた日に』で知り、有名になった『タイタニック』とこの『乙女の祈り』は遅れて観たもの。メラニー・リンスキーはこの作品で知ったお方。そして、ニコラウス・ガッターの小説、さらにこのお話は実話を基に描かれたものだと知り衝撃を受けた。また、ジュリエットはミステリー作家として生きているとも...。これらの交錯する中、今想うのは映画を先に観て良かったかな...という感じ。二人の多感な思春期の幻想と狂気を行き交う様子、そして親友からさらに深い関係となる辺りの描写、ファンタジックな映像の美しさが鮮明に焼きついている。イタリアのテノール歌手マリオ・ランザの「ドンキー・セレナーデ」を歌いながら自転車に乗って、冬の寒空の下二人は駆ける。歌い、笑い、ふざけたりしながら...幸せなひと時。しかし、此処から先はかなりグロテスクでもある。1950年代という時代、女学生同士の関係や世界観から精神疾患と見なされた。作家を目指す二人の少女は、ある日をきっかけに会えない状態にされてしまう。電気ショック治療なども受けるジュリエット。そして、二人を裂いた母を殺生という事件になってしまう。ポウリーン・イヴォンヌ・パーカー16歳、ジュリエット・ヒューム15歳、1954年6月22日(火曜日)有罪判決を受ける。事実を認めた二人は、後に釈放されるけれど、決して二人は再会しないという条件付きだった。そして、今も違う土地で生きるふたり...。

夢に浮かぶ面影は かつて見た天使のよう ぼくはただ叫ぶだけ きみこそ愛する女と

この映画は私には青春映画として残っている。親も周りの何ものも、また外気すらをよそに二人の少女の深まる刻、この衣服を脱ぎ捨てながら歓喜し合う瞬間は何も見えてはいなかったのだろう...疾走し加速化し暴走する思考は残酷小説さながらにとても大きな罪を犯してしまうのだけれど。

初老になったアン・ペリーことジュリエットは当時を振り返り語っていた。「常軌を逸していた、狂っていた」と反省し、三年間の獄中期にその夢から覚め、「確かにあの時は、そうするしか他はないと感じていたけれども。ポウリーンが自殺する恐れもあったし、病気に苦しむ自分を支えてくれた唯一の友のためなら、なんでもするつもりでした」と。”青春”とは時に狂気を伴うこともある熱病のようなものだとも想う...。

関連:乙女の祈り (ピーター・ジャクソン監督) : クララの森・少女愛惜

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