『秘密の儀式』 ジョセフ・ロージー監督 (1968年)

ジョセフ・ロージー監督の1968年映画『秘密の儀式』がようやくソフト化決定(2008年8月6日発売)。私はミア・ファローが20数年間ずっと好きでいる。ミアの出演作品はまだもう少し未見のものがあるけれど、今のところ、この作品が一等大好きなのだ。80年代にローカル(UHF放送)な映画番組からの録画のビデオを幾度もくり返し観ていたものだ。その放送は吹き替え版だったので、すっかりミア扮する風変りな気のふれた少女チェンチの台詞を暗誦してしまっていた程。そして、外国版のビデオを取り寄せて(当時は随分高かったのですが)英字幕ながらそれも幾度も観ているもの。この少女というのも設定では22歳なのだけれど、時が止まった少女のようなチェンチ(撮影当時のミアは24歳頃)。また、大女優のリズ扮する娼婦レオノーラの哀れさ、義父役のロバート・ミッチャムの不気味さ、美しい映像と少し怖いサスペンス仕立てはジョセフ・ロージー監督のお得意とするところ。最初に観たロージー作品はダーク・ボガード主演の『召使』!!

ローズマリーの赤ちゃん』と同じ年に製作され公開されたもの。当時のミアはビートルズ達とインドに行ったりしていた頃だと想う。また、ミア・ファローが英国映画にとても合うのは少女期を英国で過ごし教育を受けた国なので。その後、アメリカで本格的な演技の勉強と舞台でデビューを果たすという経歴のお方。この『秘密の儀式』の大まかなあらすじは、9歳の頃に父を亡くし母親と再婚相手の義父と暮らしていた少女チェンチ。その母親も死んでしまう。そして、その義父は不審な男性でアメリカへ渡っていた。そんな母親の面影を忘れられず、豪華な豪邸で一人で暮らしている孤独な少女が、ふと町で母親に瓜二つの娼婦レオノーラと出逢う。レオノーラも溺死した幼い10歳の娘を忘れられず、墓地に参り彼女と心の会話をすることだけが楽しみな孤独な女性。やがて、二人は本当の母と娘のように生活を始めるのだけれど、チェンチの空虚な心は満たされることはない。現実と虚構を混同し自分だけの世界に埋没してゆくチェンチ(この辺りのミアの演技はハマリ過ぎ!)。また、この映画は主演はミア・ファローだとも言える脚本。なので、リズ・テイラーは助演を初めて引き受けた作品だそうだ(子役時代は別として)。私は共に主演だと想う。このお二人の奇妙さが素敵で大好き!レオノーラはチェンチを救うことは出来ずに少女は命を絶つ最期も壮絶。そして、葬儀の日にレオノーラは・・・。

《死んだ子供を忘れかねている売笑婦と、死んだ母を思って気が狂っている娘。「秘密の儀式」は、これをエリザベス・テイラーミア・ファローという顔合わせで映画化した。これをジャンヌ・モロージョアンナ・シムカスで演じさせなかったロージー監督の俳優感覚に注意したい。ジャンヌ・モローの智的さをリズは持っていないし、ジョアンナ・シムカスの美しい哀感をミア・ファローは持っていない。リズもミアも妙な云い方だが、どこか狂的なところがあって、まともでない女としては、リズとミアの方がずっと面白い。》 (淀川長治

『秘密の儀式』 少女チェンチ(ミア・ファロー)と娼婦レオノーラ(エリザベス・テイラー)♪として触れたものの一部に追記致しました。

秘密の儀式 [DVD]
秘密の儀式/SECRET CEREMONY
1968年・イギリス映画
監督:ジョセフ・ロージー 原作:マルコ・デネビー 脚本:ジョージ・タボリ撮影:ジェラルド・フィッシャー 音楽:リチャード・ロドニー・ベネット 出演:エリザベス・テイラーミア・ファローロバート・ミッチャム、ペギー・アシュクロフト、パメラ・ブラウン