『ジョージア』 ウール・グロスバード監督 (1995年)

cinema-chouchou2008-10-13


ジョージア/GEORGIA
1995年・アメリカ/フランス合作映画
監督:ウール・グロスバード 脚本:バーバラ・ターナー 出演:ジェニファー・ジェイソン・リーメア・ウィニンガム、マックス・パーリック、テッド・レヴィン、ジョン・ドゥー、ジョン・C・ライリー

音楽映画はやはり好きで、また姉妹ものであるこの『ジョージア』は忘れられない映画のひとつ。カントリー・シンガーとして成功し家族もある優秀な姉ジョージアメア・ウィニンガム)と、そのまるで正反対のような妹セイディ(ジェニファー・ジェイソン・リー)。姉のように澄んだ声で上手には歌えない、姉に対する憧憬と尊敬の気持ちと同時に抱く心の叫び。姉は、アルコールやドラッグに浸りパンクファッションに身を包み安酒場で歌う妹が気がかりでもあり、厄介でもある。そんな姉妹の心の葛藤を、奏でる音楽や歌う曲、流れる曲たちと見事に融合して心の襞を描き出す。1995年製作の作品なので、このセイディ役のジェニファー・ジェイソン・リーは30歳を過ぎている。でも私にはまるで堕天使のような少女に映った。彼女の黒く縁取ったメイクや華奢な身体で上手くないけれど心から歌っている。1995年のアメリカというとシアトル勢が凄くて、ファッション界にまで”グランジ”が押し寄せていた頃。そんな同時代を生きている私はジョージアよりもセイディに共鳴できるしセイディが好き!私と似ている訳ではないけれど、音楽が人生と共にあり、そこに生を見出し生きている人々がいる。”そんなことじゃ”と想われる人々もいるだろう。古い映画もヨーロッパ映画も観る。嘗ての世代の人たちが抱いていた”アメリカン・ドリーム”のような幻想。原体験していない者なので生意気ながら敢えて”幻想”と言わせていただく。ヒッピーやフラワー・ブームな映像が多く残されている。それらを観て感動することもある。でも幻想だったと...。

この映画の中で、ルー・リードの曲が使われていてそれがさらに説得力を持ち伝わるのかもしれない。私はデヴィッド・ボウイが大好き。ボウイは60年代のヒッピーたちの幻想に疑問を持ちながら違った形で表現していた。60年代末にヴェルヴェット・アンダーグラウンドアンディ・ウォーホルの後押しでニコをヴォーカルに歴史的なデビューを果たす。けれど、当時のアメリカはドアーズであったのだと想う。メインストリームは!ボウイは英国人ながら当時からヴェルヴェッツの大ファンでニューヨークで彼らのライヴを観ている。そして、ルー・リードを英国に紹介したのもボウイ。映画の内容から離れているようだけれど、この映画はメインストリームと落ちこぼれの合わせ鏡のような世界を姉妹の心の葛藤として描き出しているように想う。ジェニファー・ジェイソン・リーヴァン・モリソンの曲を歌う場面がある。彼女は演技派女優だけれど歌手ではない。でも、女優でもあり歌手でもあるメア・ウィニンガムの清楚な歌声よりも私には響くものだった。歌だけではなく、演奏でも下手でも心に届くものがある私はそう想う。下手なものを認めないお方もおられるのでこの映画の感動の具合は好きな音楽や生き方、其々の感性によって違うものだとも想う。バックバンドのボビー・メロンの中にはL.A.のパンク・バンドであったXのギタリスト、ジョン・ドゥーもいる。痛いほどにヒリヒリする映画。また、ジェニファー・ジェイソン・リーは主役でも脇役でも好きな女優さま。ルー・リードの70年代は低迷期だった。今では子供たちが増殖するばかり。私はそんなアメリカは心に響くものを感じる...上手く語れないけれど、アウトロー好きなところがあるらしい。