『黒蜥蜴』 深作欣二監督 原作:江戸川乱歩 原作戯曲:三島由紀夫 (1968年)

cinema-chouchou2009-08-11


黒蜥蜴
1968年・日本映画
監督:深作欣二 原作:江戸川乱歩 原作戯曲:三島由紀夫 脚色:成澤昌茂 撮影:堂脇博 音楽:富田勲 美術:森田郷平 出演;丸山明宏、木村功川津祐介、松岡きっこ、宇佐美淳也西村晃、小林トシ子 特別出演:丹波哲郎三島由紀夫

畏怖の念を抱きながらもやはり綴っておきたいので珍しく日本映画を。1968年の深作欣二監督映画『黒蜥蜴』。主演は尊敬してやまぬ美輪明宏様の改名前の丸山明宏時代で、黒蜥蜴こと緑川夫人。そして、名探偵:明智小五郎木村功が演じている。原作は江戸川乱歩、戯曲は三島由紀夫という豪華さ。美術は森田郷平とデータに掲載されているけれど、美輪様も大きく携わっておられるに違いないと思っている。映画の冒頭から終盤の壁画(オーブリー・ヴィンセント・ビアズリーの「サロメ」が描かれている)、恐怖美術館の舞台セット、お衣装や小道具...すべて一貫した美意識。耽美!素晴らしい!勿論、お美しい美輪様のお姿も完璧。何よりも好きなのは、日本語の美しき詩的表現の数々である。それらの台詞を聞くだけでも充分に美しいのであるが、宝石商の所有する「エジプトの星」を手に入れる目的で繰り広げられるサスペンス。このお話は屈折した愛の物語でもある。名台詞のひとつ「追われているつもりで追っているのか 追っているつもりで追われているのか 最後に勝つのはこっちさ」とお互いが語る。船中で黒蜥蜴は間もなく海に眠ることになる明智小五郎への思いを語る。本人が聞いているとは知らずに。恐怖美術館での雨宮潤一(川津祐介)の裏切りと宝石商の娘:岩瀬早苗(松岡きっこ)の替え玉...結局は変装して屋敷に潜り込んでいた明智の勝ちだったのだけれど、死んだ(殺してしまった)と思い込んでいた明智が生きていたことを自分の死よりも喜ぶ黒蜥蜴は悪女であるけれど、明智が語る「本物のダイヤはもうなくなってしまった」と。黒蜥蜴こと緑川夫人の心は本物の宝石(ダイヤ)だったのだ。この辺りの絶妙な男女の綾なす秘めた心に胸を打たれる。三島由紀夫も特別出演されており、恐怖美術館の生人形(剥製)の青年として僅かに登場される(この人形化されている三島氏ですが静止するのは難しい体勢だったのか揺れています)。美輪様のお芝居での『黒蜥蜴』は3度拝見しているのだけれど、舞台と映画はまた異なる魅力。詳しいお話は原作を!

※洋画が主なのですが、日本映画も好きです。でも、やはり「昭和」が好きなもので時代遅れで最新情報にもとても疎いのです。時々、また邦画(格別お気に入りの!)感想もメモしてゆきたいと思います。