『追想 愛と復讐と男の戦い』 ロベール・アンリコ監督 (1975年)


ロベール・アンリコ監督がフィリップ・ノワレロミー・シュナイダーを主役に描かれた1975年作品。勿論、音楽はフランソワ・ド・ルーベ!邦題のサブタイトルにあるように”愛と復讐と男の戦い”のドラマ。美しい妻クララ(ロミー!!)と可愛い娘フロランスと愛犬マルセルと共に幸せな日々を送っていた医師のジュリアン。時代は1944年の連合軍によるノルマンディ上陸作戦が決行時のフランスの片田舎。危機感を持ちながら過ごしている人々、負傷した人々の治療をしているのだ。けれど、悪夢が襲う!この世で最も大切な愛する妻子が惨殺されてしまった...もう、ここから、淡々とした巧い味わいのある演技でフィリップ・ノワレの行動を見守る。祖父の古いショットガンを手にして、ドイツ軍の兵士に次々と復讐してゆく。その間、ジュリアンの追想が常に過ぎる。美しいクララに一目惚れした日のこと、結婚式の日、娘の小学校の卒業式の日...この作品では美しいロミーの笑顔を沢山拝見できる。その美しさがさらに悲劇に哀愁を帯びる。血まみれの復讐劇ではなく、アンリコの描き方は此処でも冷静でカッコイイ!

フィリップ・ノワレも好きで、『地下鉄のザジ』で知ったお方。飄々としたとぼけたコメディ・ドラマも絶妙ながら、このような役も演じることができるお方。私はロミー・シュナイダーがとても好きなので、その短い悲運の人生を想うと哀しい。この映画の中で笑うロミー、悲しそうにしている場面...すべてが美しく涙を誘うのだ。これは、全く個人的な感情のことで、もっと冷静に映画だけを観ることができたなら...とも想うけれど、私はただの映画好きなのでこんな具合。

戦争映画が好き!でも、戦車や血まみれシーンは無くてもいい。戦地で闘う兵士たちにも様々で恐怖に怯えながら、戦後も何かにとらわれてしまった方も多いだろう。また、戦時下のその国々で生きていた人々を想うとたまらない。このような戦場の陰を描いたもの、そんな時代に芽生えた恋や友情、家族の絆...などを描くことで訴えてくるような作品が大好き!ロミーというと『離愁』というジャン=ルイ・トランティニャンと共演した作品が想起される。『追想』と同じくパスカル・ジャルダンによる脚本でもあるので不思議ではない。

今、オリンピックの中、驚異的な人々を観て歓喜と感動で泣いてばかりいる。泣き虫の私ながら、その涙にも色々ある。泣いたり笑ったりしていると疲れるけれど、怒ることよりはずっと楽でいられる。

追想 愛と復讐と男の戦い/Le Vieux Fusil
1975年・フランス映画
監督:ロベール・アンリコ 原案:ロベール・アンリコ、パスカル・ジャルダン 脚本:パスカル・ジャルダン、クロード・ヴェイヨ 撮影:エティエンヌ・ベッケル 音楽:フランソワ・ド・ルーベ 出演:フィリップ・ノワレロミー・シュナイダー、ジャン・ブイーズ、マドレーヌ・オーズレー、ヨアヒム・ハンセン、カトリーヌ・デラポルテ、カロリーヌ・ベーム

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