『司祭』 アントニア・バード監督 (1994年)

司祭 司祭
監督:アントニア・バード 出演:ライナス・ローチ、ロバート・カーライルトム・ウィルキンソン、キャシー・タイソン、クリスティーン・トレマルコ (1994年・イギリス映画)
何度観ても最後に溢れる涙と深いテーマに考えさせられてしまう。英国映画には同性愛作品が多い。この『司祭』は若きハンサムな司祭役のライナス・ローチ、さらに彼の恋人役を演じるロバート・カーライルが出演しているというだけで観たもの。そして、何たる衝撃!複雑な感動と疑問が入り交ざり、とても重要な愛すべき作品のひとつとなっている。司祭(ここでは神父)としての使命、聖職者としての社会の眼差し、しかし人間。欲望との葛藤で主人公グレッグは苦悩する。隠れてゲイバーへ通う彼はある欺瞞を抱えている人間でもある。その欲望を抑え込もうとする意志がある故に、さらに苦渋は重い。この映画はアメリカや世界各国のカトリック教会からボイコットされ、ローマ法王も抗議の声明を発した。しかし、この映画は何も教会を批難するものではないし、ゲイ讃歌を謳うものでもない。人間だれしもが抱えている心の問題。お話は二重で進んで行くので実の父親に性的虐待を受けている少女とその家族の問題。神父は個人の秘密を他言できない。でも、この少女を救いたい気持ち...。最低の父親!知っていて黙っていたと批難する母親に憤る。少女サラだけはグレッグと心が通じ合う。懺悔。最後に二人が抱き合いグレッグが許しを請う。ふたりの涙は浄化する心から溢れるものだと私も涙する。色んな意見が持たれる作品だろうけれど、深い問題があるけれど、慈悲と憐れみはいかなる立場、職種、国籍の異なる人間にも共通したものではないだろうか。

追記
主役のライナス・ローチの他、脇にも演技派が揃っているキャスティングも大満足。少女サラも透明感のある美しい方。でも、ロバート・カーライルトム・ウィルキンソンが出ているので『フル・モンティ』も自然と浮かぶようになってしまった。こちらは英国ならではおバカな映画で面白い。