『わが青春のマリアンヌ』 ジュリアン・デュヴィヴィエ監督 原作:ペーター・ド・メンデルスゾーン『痛ましきアルカディア』 (1955年)

cinema-chouchou2008-04-10


ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の『わが青春のマリアンヌ』は1955年のフランスとドイツの合作映画。ジュリアン・デュヴィヴィエ監督というとジャン・ギャバンジェラール・フィリップダニエル・ダリューからアラン・ドロンといった方々のお顔が浮かぶ名匠。全ての作品を観たわけではないけれど、この作品はデュヴィヴィエ監督の異色の青春映画として永遠な気がする。初めて観たのはテレビ放送だった。途中からだったのだけれど、そのモノクロームの映像の中の幻想的ななんとも言えぬ美しさに心は奪われたと言った感じ。この映画は少女映画と捉えてはいない。少年映画だと思っている。でも、主役の少年ヴァンサンが夢か幻か現実なのか...恋焦がれた不思議な乙女マリアンヌ(マリアンヌ・ホルト、マリアンネ・ホルト)の端正な美しさ、またヴァンサンを密かに想っている学園長の姪リーズ(イザベル・ピア)のふたりの美しさが、森と山の中のお城と湖、寄宿舎の少年たちと共に主役のヴァンサン以上に私は今も印象強く残っている大好きな映画♪

ペーター・ド・メンデルスゾーンの『痛ましきアルカディア』の原作を、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督が自ら脚本化したもの。ややこしいことに、フランス版とドイツ版が作られている。マリアンヌ・ホルトとイザベル・ピアはどちらにも出演されているけれど、主役のヴァンサンはフランス版ではピエール・ヴァネック、ドイツ版ではホルスト・ブーフホルツが演じている。同じ舞台で二組の配役による撮影が行われたというもの。先に観たのはフランス語版だった。そして、ドイツ語版を観た。最初の印象が強いのだろうか...ヴァンサン少年はピエール・ヴァネックの方が先に浮かんでしまう。久しぶりに再見しようと想っているところ。ヴァンサンを慕う少年フェリックス(ミヒャエル・アンデ)を再確認したいので(どうでもいいことが結構重要だったりする)。マンフレッド(嘗てのヴァンサンの学友)が回想する形で始まるのだけれど、密かなヴァンサンへの思いも感じられる辺りも定かではないのがいい。

濃い霧と、うっそうとした木立に包まれた静かな湖。その中に、”幽霊屋敷”と呼ばれる古城がひっそりと佇んでいる。ハイリゲンシュタットの森と、ワーグナーに関係のある古い館が舞台。白黒映画ならではの美しさ!と言えるかもしれない。それは観る者に夢とロマンを与えてくださるかのように。お話は結局のところ、現実か夢物語なのか曖昧さを残したまま。母を慕い育った少年が親元を離れ寄宿舎で過ごす思春期を、バロック的な舞台と幻想的な映像と共に美しく描いている。この夢のような感覚がとても私は好き。現実と幻想の区別の無い曖昧さは素敵すぎる☆

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