『時計じかけのオレンジ』 スタンリー・キューブリック監督 (1971年)

時計じかけのオレンジ [DVD]
時計じかけのオレンジ:A CLOCKWORK ORANGE
1971年 イギリス映画 スタンリー・キューブリック監督

出演:マルコム・マクダウェル、パトリック・マギー、エイドリアン・コリ、オーブリー・スミス
原作:アンソニー・バージェス

私にとって過去最悪の夏がようやく去ろうとしている中、台風の到来。早すぎる夏バテ状態でも映画は欠かせないものだった。今月からはマメに日記に綴ろうと思う。10数年振りに観た「時計じかけのオレンジ」。初めて観たのは80年代初頭頃のリバイバル上映で「地球に落ちて来た男」との2本立て。今はもう無い梅田の小さな映画館に大人の人たちがいっぱい詰め掛けていた。学校を早退(不当な理由ではこの1度だけ)して制服姿で友人と大慌てで向かったものだ。でも、こんなに年月が経っているとは思えないから不思議。凄い熱気にワクワクした。到着が遅かったので立ち見で4時間程を過ごしたのかと思うと気が遠くなる、今なら。

こんな遠くて色褪せない記憶と共にこの映画は私に焼きついているのだけれど、実は最初はさっぱり意味が分からなかった。2本目のボウイがお目当てで集中していなかったのか?でも、修正いっぱいのボカシたものが氾濫する映画の初体験でもある。今ではDVD化されレンタル屋さんにも普通に名作として並ぶ。今回、3度目の鑑賞で私ははじめて無修正版を体験できた。(以前から思うけれどあの不思議なボカシたもので観る方がずっと意味有り気な感じ...)。

怪優・名優のお一人であるマルコム・マクダウェル扮するアレックスは15歳の少年という設定(当人は当時20代後半)、暴力・セックス・ベートーヴェンを愛するこの少年の悪行と社会機構の中で色鮮やかに描かれる映像の美しさに感動した。1971年作品だとは思えない。SF映画とも言われるけれどジャンルは超えている。アレックスが愛する音楽がロックでなくベートーヴェンというのもこの作品の魅力に思う。犯罪は罰せられるべきなのだけれど、社会仕掛けにされてしまうあの実験シーンは辛かった。そして、人工化されたアレックスがかつての仲間(警官になっている!)に暴力を受けるシーンとか・・・。そして、助けを求めてたどり着く邸宅は以前押し入り残虐な悪行を働いた作家アレクサンダーが今は車椅子生活をしている場所だった・・・。

「第九交響曲」と「雨に唄えば」がこの作品の中でキー的な使われ方をしていること、今この名作が年齢制限があるのか?とか、キューブリックの叛逆的なユーモアと映像美、面白い語り口調(ロシア語混じりの造語だそうだ)、マルコム・マクダウェルはカッコイイ!...そんな観終えたあとの不思議な思いがグルグルした。

キューブリックという監督が偉大な方だと知ったのもボウイのインタビューだった。公開当時は賛否両論だったそうな「2001年宇宙の旅」に感銘を受けて作られた「スペース・オディティ」(ほぼ同時期作品)。でも、私が今までに観たキューブリック作品で一等好きなのは「バリー・リンドン」なのだけれど。