『モンド 海をみたことがなかった少年』 トニー・ガトリフ監督 (1995年)

モンド ~海をみたことがなかった少年~ モンド ~海をみたことがなかった少年~:MONDO
監督:トニー・ガトリフ 出演:オヴィデュー・バラン、モーリス・モラン、ジェリー・スミス
(1995年・フランス映画)
少年映画は少女映画同様に反応が敏感なので、この「モンド」は当時チラシを頂き”これは!”と小さな劇場で観る事の出来た作品。その後、ビデオも欲しくて購入した。DVD化されたタイトルにあるように、原作はル・クレジオの短編集『海を見たことがなかった少年』。別に原作を読まなくてもこの不思議な優しさに満ちた世界は心ある方なら感じるものなのでは...って傲慢だけれど思ってしまう程。観終えた後、なかなか席を立てずにいたのはどうしてだろう?90年代の映画ながら、古くからのヨーロッパ映画たちの中で描かれてきたような心の純真さと自由さを、このどこからやって来てどこに行ってしまったのか分からない不思議な可愛いモンド少年を中心に、彼と触れ合う老人や町の人々、そして南仏の自然と日に焼けたモンド君の素朴な表情や行動が胸を打つよう。上手く言えないけれど。孤児のモンド君はまだ幼いので施設に入れられてしまう年。なので、警官がいると逃げ回る。”僕を養子にしてくれる?”と大人たちに語りかけるけれど、そう簡単なことではない。しかし、終盤にあるベトナムの老女が彼を引き受けるために、いつも家の門を開いていてくれる。でも、モンド君はいつしかどこかへ行ってしまった...。何か寂しい余韻と優しい風が吹くような心に残る作品。モンドとは世界を意味するフランス語。そんな名の少年はどこにも属さない存在なのだろう。