『草原の輝き』 エリア・カザン監督 (1961年) 

cinema-chouchou2005-02-19


草原の輝き:SPLENDOR IN THE GRASS
1961年 アメリカ映画 

監督:エリア・カザン 原作・脚本:ウィリアム・インジ 撮影:ボリス・カウフマン 音楽:デヴィッド・アムラム

出演:ウォーレン・ビーティ、ナタリー・ウッド、パット・ヒングル、ゾーラ・ランパート、サンディ・デニス、オードリー・クリスティー

ワーズワースの詩がいつまでも心に残る美しき青春映画のひとつ。高校生の多感な時期の心の揺れを見事な演技力のバッド役のウォーレン・ベイティと、子役時代の可愛さから成長し、まばゆいばかりの美しさのナタリー・ウッド♪監督はエリア・カザン。私はナタリー・ウッドが好きな上に女性なので、どうしてもディーニーに感情移入してしまう...(冷静に観てるつもりながら)。このような名作映画を観ずして少女映画を語りたくは無いと想う。この映画のタイトル、ワーズワースの詩が心に響く。繊細な壊れやすい少女の心、その微妙な心理描写に胸が痛む程伝わるものがある。ハッピーエンドにはならないけれど、苦い初恋の経験も人生だし輝ける青春の刻なのだろう。”少女映画”、”ガーリー”、”少女趣味”、”少女愛好”、”少女幻想”...一括りにはできないし、イメージ先行で馬鹿にされるのもやっぱり悔しい。もうずっと、こんな具合で生きている。なので、そろそろ心を開いて語っても責任は持てる歳になったかな...と想う。そして、心の赴くままにさらに深まるようなのだ。こういうことが何になるのだろう...そんなことは分かりはしない。私はもう少女ではないけれど、向かう心に逆らいたくはない。”少女”や”乙女”...という言葉に拘ってもいない。ただ心が求める...それは時にとても苦痛でもあるけれど好きなのだろう。変なの☆

草の輝くとき 花美しく咲くとき ふたたび それは帰らずとも 嘆くなかれ ― その奥に秘められし力を見出すべし・・・

ワーズワースの詩がラストに流れる...その言葉とほろ苦い青春の悲哀に胸がいっぱいになる。後追いながら、私が好きな青春映画の一つだと思う。

身分の違いや進路の違いですれ違う愛する者同士の切なく儚き恋。ディーニーがバッドに会えなくなり精神を壊してしまう辺りの乙女心に涙する。でも、時が流れ互いに大人になってゆく。そして、久しぶりに再会した折のバッドの姿...そして、その時のディーニーの微笑はあまりにも辛いけれど、これからはお互いの人生を歩んでゆくのだ...そして、ワーズワースの詩がたまらない余韻を残す...。

ナタリー・ウッドは美しいまま早くに世を去ってしまった銀幕の名花のお一人だと思う。おしゃまな子役時代から10代、20代とめきめきと美しさを増していく。「理由なき反抗」も代表作だと思うけれど、私はこの「草原の輝き」がとても好き。嘗ては相手役のウォーレン・ビーティは全く興味が無く対して覚えてもいないくらいだった。ナタリー・ウッドの思春期の大人になる手前の恋心が痛い程印象的だった。

いつもの如く、今だと相手役のウォーレン・ビーティも気持ちを抑えて進学...という今の時代の若者とは違う純愛ものを好演していたと思える(お二人とも、実生活では恋多き方々だったようだけれど)。初々しいお二人の存在、特にナタリー・ウッドの美しさと恋の病を素晴らしく表現した幾つかの忘れられないシーンがある。

ナタリー・ウッドは40代という若さで水死してしまった...とても残念に思う。シリアスな作品のみならず、コミカルな演技もとてもキュートだった。「グレートレース」とか大好き!(ジャック・レモンがまた最高!)ロバート・レッドフォードと共演した「雨のニューオリンズ」も素敵だし、とにかく綺麗だった。

監督は「欲望という名の電車」「エデンの東」などでも有名なエリア・カザン。50年代に「赤狩り事件」により、引退後も亡くなった(2003年)今日も、アメリカの映画関係者の方々にでさえ、一部では今なお批判され続けているという...。

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