『細雪』 市川崑監督 原作:谷崎潤一郎 (1983年)

細雪 [DVD]
細雪
1983年 日本映画 市川崑監督

出演:岸恵子佐久間良子吉永小百合古手川祐子伊丹十三石坂浩二岸部一徳三條美紀江本孟紀仙道敦子

すっかり桜も散ってしまったけれど、満開の時に久しぶりに『細雪』を観た。というか観たくなってビデオを出してきた。「桜」は綺麗で可愛く儚げ。そして桜の木から想像されるイメージは実はあまり愉快ではない私。この春で両親共に13回忌を終えた。毎年家族で行ったお花見の思い出たちと、すっかりお花見から遠ざかってしまった私の心が「桜」を見ると不思議な感覚を覚えるのだ。なので、実は春はあまり好きな季節ではなくなってしまった。「桜」というと谷崎潤一郎、あるいはもう少し怖い所では坂口安吾などが浮かぶ。

細雪』は谷崎潤一郎の原作。3度映画化されているけれど、私は世代的にこの1983年の市川崑監督の作品が好き。さらに、長女:鶴子役の岸恵子さんが子供の頃から好きだから。嘗て観た時と年齢も環境も変わっているので、感動もまた違ったものだった。でも、最後は涙が溢れていた。京都の嵯峨での宴、見事な桜吹雪の映像はいつ見ても圧巻だ。そして、4姉妹のそれぞれの性格、テンポの良い会話、美しい関西弁、美しいお着物、髪飾り、家具等、豪華なキャスト...を堪能した。特に、長女:鶴子と次女:幸子(佐久間良子さん)のやり取り、言葉も仕草も素晴らしい!昭和13年という戦争が近づく頃の昭和、大阪の船場

三女:雪子役の吉永小百合さんの内に秘めた演技も美しいと思った。四女:妙子役の古手川祐子さんも、みんな今から思うととてもお若い。もう20年以上前の作品なのだ。この映画日記で初めて邦画が出てきた。どうしても欧州映画を優先してしまう。邦画は情けない程、昭和で止まったまま。でも、好きな作品はやっぱり再び観てしまう。

すっかり日本も変わったけれど、忘れたくないものって大切にしたいと思う。温故知新、好きな言葉。この映画を観てさらに強く胸に言い聞かせている気がする。子供の頃、おじいちゃんのお家に行くと、母がよく「本家に挨拶に行って来るから付いておいで。」と言われてトコトコ付いて行った。「本家」って何だろう?と思いながら。昔の人は今の少子化と違い兄弟姉妹が多いから羨ましい。でも、それぞれの立場や家族、色んな葛藤や言い争いもあるのだと思う。「みんな、ええようになったらええなぁ〜。」と最後に岸恵子さんが見事に語る。

東宝の50周年記念作品というだけあって、脇役の方も名優さんがいっぱい。江本さんも出ていたのだった。私はお久役の三條美紀さんも好きなので再会出来て嬉しく思えた。

細雪 (中公文庫)